矢嶋

ゆれる人魚の矢嶋のネタバレレビュー・内容・結末

ゆれる人魚(2015年製作の映画)
3.4

このレビューはネタバレを含みます

大筋は面白いというか、ダークファンタジー風にこの題材やろうと思ったらこうなるだろうなという展開。
そこにサブカル的な要素を込めて個性を確立している。ディズニー的なイメージと乖離した(というか伝承に忠実な)人魚のデザイン、エログロ的な展開、OPのアニメやミュージカルのように度々挿入される80年代MTV的な楽曲。この辺は中々センスがあると思う。また、人魚が正体を隠すわけでもなく堂々としているのも意外性があった。

一方で、尺が短いとは言えストーリーの細部がかなり抜け落ちている。そもそも、人間を餌としか思ってなかったのに恋してしまうという展開自体、大したきっかけがないので分かりにくい。あそこまであっさりしていると、普通は恋しないものなんだという認識も揺らぐし、ラストが軽くなってしまう。
結局大した理由もなく手術までするのも愚かなら、傷だらけなの見れば分かるのに魚じゃなくなったからヤろう→血まみれになって萎えるってのも愚か。迷信とか言ってたのに声を失ったことに対する反応も薄い。

舞台のスターに上り詰めた過程とかもそうだが、手術の時に尾を切除するだけでなく交換みたいになっており、その相手はどっから出てきたんだと思った。人魚に憧れる人間とか、描く要素あるでしょ。

人魚が堂々と姿を晒すのは意外性こそあるが、ステージに上がって客にまで正体を明かしていたことで、あの世界での人魚に対する認識がどうなのかが気になってしまった。
大騒ぎになっていないのは客がトリックと思ってるからかと思ったが、見ていくと彼女達を本物と認識して、生態も分かっているように思えた。そのせいで人間を食い殺した時に速攻でばれており、信用したいけどもしかしたら…みたいな葛藤もなかったのは拍子抜けした。

人魚に対する認識という点が顕著だが、色々な点であまりにも描写が少ない。おそらく世界観が重要で細かい部分を説明しない方がいいのは分かるが、もう少し細部を描いてくれないとドラマに感情移入できない。せっかく視覚的な魅力があるのに、色々ともったいない作品。
矢嶋

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