このレビューはネタバレを含みます
溝口遺作、最後の明るい赤い線
1956年撮影宮川一夫。助監督増村保造。監督溝口健二。
日本映画の黄金時代であるフィフティーズ、1950年代。
日本の四大巨匠の素晴らしきエポックメイキング作品が量産された。
黒澤明の侍映画の基本が今や娯楽映画の基本となる「七人の侍」(1954年)
親子、別れ、挨拶。小津映画が世界で支持される日本名刺的映画「東京物語」(1953年)
男女二人の道行きは、浮ついた重い溜め息、成瀬の最高な絶望愛「浮雲」(1955年)
そして
興業、集客が黄金であった時期に遺作となった四大巨匠の一人、溝口健二監督。
大映よりDVDが再発売されやっと気軽に借りれるようになった溝口作品。
現場の気難しさ
江戸物を撮り続ける古典への思い
演技は出来るまで待つ、超わがままで俳優を追い詰めるメソッド
様式美すぎるカメラワークと長廻し
そんな溝口作品まだまだ全然見れてない領域。
二人の禁断の恋はいばらの傷め愛、私にとっては溝口エポック「近松物語」
日本、芝居創世記で女優創世記話「女優須磨子の恋」
失念した十代の頃に見た「雨月物語」「山椒大夫」
久々に一回挫折した溝口遺作の風俗物語。「赤線地帯」をチョイス。大映DVD鑑賞となりました。
遺作で風俗や恋を描く監督って珍しいなぁ。
それもこんなに軽やかだったなんて、、、。
溝口曰わく本作は
「笑えない喜劇」という事だが、いやいや私は笑えてかつ素晴らしい女優達に魅了された。
物語は、売春禁止法が論議される日本。ここ吉原の女性達。いわゆる「赤線の女性達」「売りの地域」「赤線地帯」の物語。
溝口は、体を売って生計を立てる彼女達を愛情深く眺め、表現している
可笑しかった素晴らしい元気娘の京マチ子必見!
「うち、八頭身」((笑))
と 自ら言って客に食いつく京様必見。ずーっと劇中食べ物くーてるから笑えます。京様こと「ミッキー」のファッションとこのキャラクターのために生まれてきたようなグラマラスボディは、必見!
そして
賢く貯めて、シコシコ騙して、したたかな若尾文子様も必見です!
いやめっちゃ綺麗です。助監督の増村監督と若尾コンビがここで誕生するんですね。増村、若尾コンビの隆盛は、1960年代に爆発します。
騙し騙され
死ぬ死なんで体を売り
出ては戻り
恥ずかしいみじめを感じ外に売る
赤線のラインの女性達
溝口監督の今までの硬さがとれ
現代劇だからか素晴らしい軽やかなユーモアとそれぞれに向ける女性達へのわかるわかるよぉ的同情愛が、垣間見れたような気がします。
赤い女性達の複数ドラマ
素晴らしく柔らかな女性達に冷たながらも溝口の優しさが見れた、お世話になった溝口の赤線ラブレターにも見えます。
確か駆け落ちしたんですよね溝口監督。四大監督の中では一番のプライベートは、恋バナ修羅場だらけの溝口監督です(未婚です)
さて
溝口監督が最後に魅せた
ニュースタイル
赤い地域で働く女性のサーガ
それは苦いか?
しょっぱいか?
あまいのか?
溝口遺作、最後の明るい赤い線
ぜひご覧ください!
追伸
遺作で今村昌平も「橋の下のぬるい水」でロマポルチックに恋愛ディープに迫ったラストフィルムだっただけに感慨深いです。
最後の映画が恋愛映画っていう事がとっても惹かれます。
あとキューブリックも遺作辛辣な闇性交映画「アイズワイドシャット」ですからね。
映画監督の遺作は何?って私はいつも気になっています!