西島秀俊が若く、風貌も今とちょい違うんだけど、この頃から声は変わっていないのと、非常に黒沢清的な役者としての空気感をまとっている。ぬぼーっとたたずみ、何を考えているか分からず、突発的に異様な言動をしそうなこの感じ。
緒川たまきも、適度にフィクショナルで、適度に現実的なラインで「美女」としての存在感を放っている。
さすがにこの時代のこのバジェットの作品なので、蜘蛛のCGなどは甘いが、そこに至るまでの雰囲気作りはさすがに黒沢清作品というもの。
この人にしては珍しい「回想シーン」などを多用しつつも、それぞれの視点から語られる食い違ったストーリー、そこから浮かび上がる歪んだ夫婦関係を描写していく前半と不穏な空気は巧みで、そこから一気に異常な瞬間へ飛躍するタッチ、まさしく黒沢清作品。
幽霊は登場しなくても、体験者が「普通の人」でなくても、確かにJホラー的な映像が展開していて、同じ楳図かずお原作の「おろち」などを思いだしつつ、Jホラーがこっち方面に活路を見出すifはあり得なかっただろうか、とか気付けばそんな夢想をしていた。