エクストリームマン

ウィンストン・チャーチル /ヒトラーから世界を救った男のエクストリームマンのレビュー・感想・評価

3.7
You are strong because you are imperfect. You are wise because you have doubts.

ウィンストン・チャーチルその人について語りたかったというより、脅威の台頭に「打ち勝った」という体験の黎明を思い出せといったようなことを、全体としては語っているような印象。勿論、チャーチルその人についても触れてはいるけど、たとえば描き方が『アマデウス』のサリエリほどでないにしろ(ベクトルは逆だ)、極端というか明暗を分けすぎているきらいがある。それは、ウィンストン・チャーチル個人の資質や特性について肯定的な側面のみを継ぎ接ぎにして見せたかったからではなく、寧ろ先述したように、映画全体に込めたメッセージをリニアな物語として語ろうとすることから逆算された結果に違いない。

昨今、本作のように巨大な出来事の中の極短い期間を切り取った映画が多い気がするが、その短い期間であっても、チャーチルが有事の人というか、戦時内閣のような場所でこそ力が発揮できるタイプの人間(逆に、平時は求められるタイプの人種ではない)であることがよくわかって興味深かった。人を煽って望む方向に誘導しようとはするが、自分自身は結局人の言うことを聞かない気質。政治家らしい器用さには欠けるものの、突破力はある。

フガフガ終始息苦しそうに歩き回りながら葉巻を吸い続けるゲイリー・オールドマンのなりきりっぷりはさすがだなとは思う。目だけがゲイリー・オールドマンを残した特殊メイクも凄い。

クレメンティーン役のクリスティン・スコット・トーマスの優雅さとか、リリー・ジェームズの溌剌とした存在感が共によかった。まぁ、チェンバレンもハリファックスも顔が強い俳優で、そっちはそっちで面白かったけど。