豚肉丸

暗くなるまでには/いつか暗くなるときにの豚肉丸のレビュー・感想・評価

4.8
女性映画監督が学生運動家でテロに巻き込まれた女性にインタビューを行う。しかし監督が森の中でマッシュルームを吸ったことをきっかけに、次元を超越し始める...というお話

再鑑賞。
結局再鑑賞しても本作の意図も演出の意味も何も掴むことは出来なかったものの、それでも本作には得体の知れない魅力が詰まっていて、その得体の知れない魅力を再び味わえただけでも最高の映画体験だと言える。
学生運動家で血の水曜日事件に巻き込まれた女性にインタビューを行う、という話が一貫して通った筋なのだが、途中でその筋は途切れ、様々な次元を行き来しながら同一人物の様々な形の人生を追いかけることになる。(分かりやすく言えばEEAAO的)
血の水曜日事件を下地として捉えると、中盤から描かれるマルチバース的次元の超越は「起こりえなかった未来」を描いていると捉えられる。別の形の人生のぶつ切りで描いた後に印象的に映される仏教の念仏は鎮魂的にも聴こえ、映画の全体的な意味合いも「血の水曜日事件の振り返りと黙祷」として捉えたらだいぶ映画の中身が見えてきそうではあるものの、それでもやはり複雑で腑に落ちない。現実の事件と虚構の物語が織り交ざった迷宮的な世界観。その人の人生を多角的に見ようとする試み?

それにしてもやはり全編に流れる雰囲気が心地良くて素晴らしい。リアリズムとファンタジーの融合と言うか、このタイの風景に合うゆったりとした印象とマルチバース的ファンタジーな世界観の融合が唯一無二すぎて、ある意味この映画でしか味わうことのできない何かがある。また何度も見直したい。
豚肉丸

豚肉丸