荒野の狼

ジャコメッティ 最後の肖像の荒野の狼のレビュー・感想・評価

5.0
彫刻家アルベルト・ジャコメッティの晩年である1964年に、作家ジェームズ・ロードをモデルに肖像画を描く数日を90分にまとめた2017年の映画。原題はFinal Portraitで、言語はロードとの会話は英語、その他はフランス語。私はジャコメッティの彫刻を目にすることはあったが人物に関しては知らなかったため、興味を持って鑑賞。
ジャコメッティは1966年に64歳で死亡しているので、芸術家としては円熟した時代だが、「すべての作品は未完成」と言い、自分の作品の評価が低く、不安を持ち、絶望を感じる時に、幸福であるなど、複雑な人物像が表現される。
本作では、ロードの肖像画に満足できないジャコメッティの苦悩と、先の見えない制作過程にまいってしまうロードの二人芝居という場面が多いのだが、コメディタッチであるため、暗くなりそうな題材にも関わらず、映画は明るい。原語は英語と
実際のジャコメッティの写真と比較すると主演のジェフリー・ラッシュは本人そっくりのメーキャップ。本作には、ジャコメッティが初期に描いたデッサンや同時代のピカソ、ブラックらキュビズムに対する意見、セザンヌ、シャガールなどに対するコメントや、ジャコメッティの肖像画や自殺などに対する哲学も知ることができる。ジャコメッティのアトリエ、彫刻や絵画の制作工程、私生活(妻、弟、愛人、知人の日本人哲学者・矢内原伊作など)も描かれている。
本作はロードが書いた著書「ジャコメッティの肖像画」原作で、絵の制作過程がまとめられた5分ほどのChristies’による動画「Aleberto Giacommetti’s Portrait of James Lord」としてchisties.comやYouTubeでみられ、本作のファンには、実際の絵や、ジャコメッティ、ロードの写真がコンパクトにまとめられておりお勧め。
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