このレビューはネタバレを含みます
主人公のサリーがほとんど見えていないことを知っているからこそハラハラし、綱渡りを見ているかのような映画だった。
劇中一番胸打たれたのは、料理長がサリーの障がいに気づき、ハムスライサーの使い方を機械の分解、組み立てから仕組みを理解させ、使い方を教えるシーンだ。
サリーが初めてスライサーを使う時、彼の視覚が映る。あまりにもこの挑戦が無謀で、現実的に考えて無理だと思った。そして案の定…
しかし料理長の指導のもとで彼は1人でスライサーを使いこなせるようになる。
本人のやる気と努力、そして周囲のサポートがあれば、可能性はどんどん広がっていくのだ。
他にもそういったシーンは数多くあるのに何故かここで涙腺が緩んだ。
危険だからやらせないではなく、どうやったら出来るようになるか。
適切な指導があればこんなに違うのかと、誰かの助けを得られる事でこんな事ができるようになるのかと。サリーの前に立ちはだかっていた障害が取り除かれた事が目に見えてわかるシーンだった。
そしてこういったことはきっと日常の中にたくさん潜んでいるんだと気付かされた。
主人公の並大抵ではない努力があってこそなのだが、障がいを抱えていても周囲の理解と適切な介助と指導があれば可能性が広がっていくシーンが数多くあり、私はそこに希望がある映画だと思う。
ただ、基本的に出てくる人が良い人ばかり、事情を知ればサポートしてくれる人ばかりだったのもあり、早い段階でホテルに、そして恋人に言ってしまえばよかったのではと思わずにはいられなかった。より働きやすくなっていただろうに…
(そこは映画だから仕方ないんだけど)
あと、これは自分への戒めだが心に留めておきたいことがある。
私達は生活の多くを視覚に頼っている。
主人公が隠していたからでもあるが、周囲のほとんどの人が彼が視覚に障がいを持っていることに見ていても気がつかないというのがこの映画のミソではあるのだが、なんとも皮肉である。
自分の周りにもそういった人(視覚障害に関わらず困難を抱えている人)が実は大勢いるということを改めて意識していきたい。