Inagaquilala

5パーセントの奇跡 嘘から始まる素敵な人生のInagaquilalaのレビュー・感想・評価

3.0
とにかく登場する人物は誰もがよい人ばかりだ。作品では、開始早々、主人公に困難が降りかかる。それは先天性の病により、視力が5%までに落ちてしまうというものだ。そのため、作品のなかでは主人公視点のぼやけた映像が登場する。もし、これしか見えていなかったら、何もできないのではないかと思うほどの視界だ。たぶんに物語的な強調も働いているのだろうが、これでは主人公の夢である「5つ星ホテルで働く」というのは無理なのではないかと思うほどだ。

主人公は視力がないことを隠しながら、ホテルの研修を助けるのだが、職場で出会った研修生仲間や難民の労働者、レストランの料理人などに助けられ、夢の実現のために奔走する。唯一、かなり主人公に辛く当たっていたレストランのマネージャー格の人間も、いつしか……。とにかく冒頭にも書いたように、登場する人物に邪悪な心を持った人間はいない。ハンディキャップを背負って夢を叶えようとする主人公に、皆、手をのばす。かなりポジティブな作品だ。

学生の実話をもとにしたドイツの作品ということだが、これだけ周囲によい人ばかりいるとは、と思わず疑り深い人間は思ってしまう。まあ、そういう作品なのだから、仕方がないのだが、ある意味、悪役の登場しないハートウォームな作品で、安心して観られるだろうが、観た後、心に残るものはあまりない。かなりご都合主義的なストーリー処理もあるし、自分のこれまで観てきたドイツ発の作品とは少し趣を異にする。主人公の視界についても、もう少し、現実に近づけたら良いのではないかと思う。いくら何でも、簡単なトレーニングだけでは、バーの棚に並んだ酒をチョイスして、カクテルはつくれないと思う。
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