TAK44マグナム

ブライトのTAK44マグナムのレビュー・感想・評価

ブライト(2017年製作の映画)
3.6
俺の相棒は人間じゃない。


NETFLIX製作によるオリジナル映画。
人間の他にオークやエルフなどのファンタジー世界の種族が生きる架空のロサンゼルスを舞台としたクライムアクション。

主演はウィル・スミス、共演にジョエル・エドガートン、ノオミ・ラパス。
監督は「スーサイド・スクワッド」でもウィル・スミスと組んだデヴィット・エアー。


ロサンゼルス市警の警官ウォード(ウィル・スミス)の相棒は警察官史上初のオークであるニック(ジョエル・エドガートン)であったが、そのことでウォードには周囲との壁ができていた。
ある夜のパトロール中、通報をうけた二人が事件現場へ向かうと、そこには異様な光景がひろがっていた。
そこでウォード達はエルフの少女を助けるが、彼女は「ワンド」と呼ばれる伝説の魔法具を使うことのできる「ブライト」であった。
ワンドは森羅万象あらゆることを可能にすると伝えられており、闇の力の復活を狙う悪のエルフ達や人間のギャング、そして仲間であった警官たちでさえも、その力を欲して狙ってくるのであった。
ウォードとニックは少女とワンドを守りつつ、なんとか生き延びようと夜の街を逃走する。
はたして、三人はワンドを守りきることが出来るのであろうか?!


人間の他に、普通にファンタジー世界の種族が生活している世界。
コミックやアニメではよく使われるものの、実写映画となるとなかなか魅力的な設定ですね。
宇宙人なら「エイリアンネイション」などがありますが、人間とオークのバディものは珍しいのでは?

どうやらオークは嫌われ者であり、社会的順列からすると底辺に位置するらしく、反対にエルフは上級市民と言うか、特権階級に多い存在みたいです。
スラムへ行くとヒップホップファッションのオークがたむろしていたり、そうかと思うと清潔に保たれたエルフオンリーの地区があったりします。
人間はその中間。エルフに使われ、オークを見下しています。
それ以外は現実のロサンゼルスと何ら変わりません。
警官がブリトーを食べようとしているとショットガンで武装したオークがぶっ放してくる、そんな風にとてもテリブルな街。
人種差別が犯罪をうみだすメカニズムを、ファンタジーの住人たちによって分かりやすく、同時に視覚的なリアリズムを薄めて表現しているのかなと思いました。

始まるといきなり、この特殊な世界観に放り込まれます。
鳥の餌を狙って妖精さんがブンブン飛び回り、それを奥さんに「早く退治してきて」と言いつけられるウィル・スミス。
ここで、この世界観に浸れないとこの先がちょいと辛いかもしれません。
もう少し、序盤はじっくりと設定に慣れさせて欲しいかな?
けっこう置いてけぼりをくらいそうな速度で進行しますよ。

大昔に闇との戦争があった等、断片的にスケールの大きいことが語られるのですが、本作の内容自体はそこまでマクロではなく、魔法テロリストみたいな連中を倒すだけの意外とこじんまりとしたもので、そこに世間から蔑まされていられるニックの苦悩や、なんだかんだ言って善良な警官であるウォードのサバイバルを盛り込んであるといった感じですね。

ギャングやエルフが次から次へと襲い掛かってくる逃走劇は、デヴィット・エアーの真骨頂。
ボロボロになりながらも何とか逃げ続ける三人、しかもウォードとしては謎すぎる少女に相棒とはいえ完全に信用できないニックという連れを伴ってなわけでして、そりゃ色々と大変なわけです。
なので、程よい緊張感と先読みしにくい展開が楽しめるのですが、敵が悪のエルフ一択になってからはよくある平凡なドラマに落ち着いてしまった印象をうけました。
ラストバトルも新鮮味がない。

とは言うものの、ノオミ・ラパスが演じるレイラ率いる狂信的エルフテロリストたちがスタイリッシュで格好いいんですよ。
無駄なセリフを吐くこともなく、ただ華麗な動きで粛々と敵を一掃してゆく丸坊主エルフと女エルフのコンビが良いですね。
そのやられっぷりもまた、派手に散ってくれて目を楽しませてくれます。

しかし、ネトフリ渾身のコンテンツとしては些か甘い完成度。
ちゃんとお金もかけているし、奇をてらいながらも狙いすぎないバランス感覚も悪くはありませんが、はたしてウィル・スミスが出ていなかったらしいどうでしょう?
もっとスター性のない主役だったとしたら話題にのぼらぬまま消えていってもおかしくないと思います。

エンタメ感が中途半端で、軽妙さよりもヘヴィな雰囲気が強めなのは好き嫌いが分かれるところかもしれません。
また、全体的なスケールはテレビドラマサイズにも見えてしまいますし、「ブライト」に関するオチが誰でも読めるものになってしまっているのがどうにも勿体無い。
そりゃ、ウィル・スミス使っているんだからそうなるのは分かるけれど、そこはもうひと捻り欲しかったですね。
せっかく中盤までの読めない展開が良かっただけに残念。

どうやら続編も企画されているらしいので、もっとツイストの効かせたシリーズに化けることを期待して待つとしましょうか。


NETFLIXにて