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ファースト・マンのshingoのレビュー・感想・評価

ファースト・マン(2018年製作の映画)
1.9
今一番苦手な監督の1人、と言いつつ新作が出るとしっかり観てしまうデイミアン・チャゼルの最新作。何が苦手かというと「セッション」と「ラ・ラ・ランド」で描かれた2人だけの世界という第三者の存在を排除した現実ではあり得ない世界観と、この監督の音楽に対する感覚が全く理解出来ない(だが本作は音楽がテーマではないのでそこは触れないでおく)。

そして本作はやはりデイミアン・チャゼル作品以外の何者でもなかった。ライアン・ゴズリングの演技は「ラ・ラ・ランド」とは別人のように感情というものが欠如されており「セッション」の2人とも全く違う静かな狂気に溢れている。だが夢のために日常を捨てる男の物語という点では一貫しており、宇宙開発計画の過程で次々に犠牲者が出る上、膨大な国家予算を失敗続きのミッションに使い続けるという異常な行為など、正論が通じないこの感覚はこれまでの作品と何ら変わりない。

違う点は常にアームストロングの視点から物語が語られること。だがこれ以上ないアップショットの多用や手ブレのカメラなど、観る人に体感させるという意図は分かるがどう考えても上手くいってるとは言えず、平坦としたシーンが多過ぎて途中から睡魔と戦う羽目になった。

ラストはお決まりの2人だけの世界で幕を閉じるが、この点に関してはこれまでの作品とはかなり趣の違う世界であり(何せこの2人の間には何のドラマもない)、かなり後味の悪い結末を迎える。単純なサクセスストーリーにしない点は良かったがそれよりリオン・ブリッジズがギル・スコット・ヘロンを演じるというまさかのサプライズの方が印象に残ってしまって何ともいたたまれない気持ちになった。
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