むさじー

冬の旅のむさじーのレビュー・感想・評価

冬の旅(1985年製作の映画)
4.0
<自由気ままに生きる女性の諸行無常>

冬の南フランス。片田舎の畑でヒッチハイカーの18歳の少女モナが凍死体で発見された。あてのない孤独な旅を続けていた彼女が死に至るまでの数週間の足取りを、旅で出会った人たちの証言を通してたどっていく。
キャンプと言っても体のいいホームレスで、他人に媚びないワガママな性格だから嫌悪する人もいるし、その自由気ままな生き方に理解を示して好意的な人もいる。モナにしても「楽して生きたい」が唯一の志で、怠け者だから生きる目標らしきものは全く見えない。映画はそんな彼女の行動と、彼女に関わった人々の証言をドキュメンタリー風に淡々と映し出していき、観客が抱く「何故旅をするのか」という疑問には触れもせず、彼女の過去や心情を描こうともしない。
それに関しては監督自身「自分には理解できない女性」を描きたかったとコメントしていて、理解の及ばない事柄にはあえて触れず、という潔さのようなものが見えて、これが「何故」に対する回答なのだろう。あくまで一人の女性の“極めて個人的な生き方”として突き放した描き方をしている。この潔さが却って、モナという社会から意図的に逸脱した女性と迎え入れる社会の対立関係、自由の持つ意味を浮き彫りにした感がある。
人間が社会の一員として生きることによって必然的に失ってしまう自由があること、社会からの逸脱は自由なように見えても生きていく上では不自由なものであること、を諭されているように思える。自由で刹那的なモナの生き方には胸が痛んだ。
むさじー

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