むさじー

アイズ ワイド シャットのむさじーのネタバレレビュー・内容・結末

アイズ ワイド シャット(1999年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

<倦怠期夫婦の再生物語に見えるが>

内科医のビルは、妻アリスがかつて旅先ですれ違っただけの男に欲望を覚えたという告白にショックを受ける。妻の告白が真実なのか、嘘なのかは分からない。しかし、夫は嫉妬からの悶々とした思いを引きずりながら、自分も欲望のままに生きようと若い娘や娼婦らに接してみるがうまくいかない。
そして旧友から得た㊙情報に好奇心が湧いて、仮面仮装の男女が集うという屋敷に潜り込み、謎めいた儀式の場で危険にさらされる。翌日、参加者だった富豪から「全てがヤラセ、狂言、嘘」だと言われ、夫は泣きながら妻に全てを打ち明けた。
倦怠期を迎えた夫婦の物語で、妻が夫の嫉妬を誘おうと嘘をついて、夫はその言葉に踊らされて暴走した末に元のサヤに収まる展開かと思えたが、キューブリックだからそんな単純なものではないだろう。
まず、あのおどろおどろしい儀式の意味合いは何なのか。仮面とセックスがシンボリックに描かれるが、この辺がキーワードなのだろう。夫婦という仮面を被った二人は、夫婦のセックスが愛情に基づく行為なのか否か懐疑的になっていたが、愛の介在しないセックスという儀式を体験して初めて、愛がセックスの前提だという常識的な世界観に到達する。全ては愛の原点に戻り、それを確認するプロセスだったと解したのだが‥‥。
タイトルも意味深で、隠喩をうかがわせるシーンが多々あり、多様な解釈が成り立ちそうな作品。『夢小説』という原作にはフロイトの影響もあるそうで、どこまでが夢かも分からない。しかし、芸術とエロスが織りなす頽廃的映像世界、先の読めない展開には引きずり込むだけの魔力がある。面白かった。
むさじー

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