ちいさな泥棒

笑う男のちいさな泥棒のレビュー・感想・評価

笑う男(1928年製作の映画)
5.0
主人公がジョーカーの元ネタである1928年のサイレント。満を持して観ましたがセットの隅々まですばらしい!貴族の父親が反逆罪で捕まりその愚行を笑い続けるようにと闇組織に笑い顔に整形されしまった心優しい繊細な青年に降りかかる「笑顔」でいることの苦行。泣きながら笑う顔、恋心が切ない。

見世物小屋で舞台を踏み巡業、人気者であるのとは裏腹に悲しみを映しだす鏡台の柄や演出、白塗りにメイクする姿までおしゃれ。かっこいい。ものっすごくかっこいい何かとキマってる映画。「ずっとその顔でいられる君が羨ましいよ」と道化師仲間がピエロのメイクを落とす姿を見つめるグウィンプレインが切ない。

善と悪が混沌とした街なかを貴族のジャケットを着て裾をひらつかせながら笑い顔で走り抜ける姿は心優しい青年でも狂気に見えてまんまジョーカー。影響を受けるのも頷ける。両手で口元を隠し目元と眉毛だけで本来の感情が見える仕草は印象的。とにかく最後の30分はずっと泣いてました。

父親は処刑され人身売買や子供に整形を施しては見世物にしている闇組織に振り回され、その組織にも吹雪のなか捨てられるわでもう辛すぎて泣いてたのに彷徨うなかで死んだ母親に抱かれていた赤ん坊を救うシーンで、助けてほしい子供が子供を助けるって過酷すぎるだろ…としんどさMAXでした。そして今度は遺産のためにあろうことかまた貴族に招き入れようと勝手に結婚を決められてしまったりする……そこで「人間として!」と腕を振り上げる姿が自分にも人権があるんだと力強く訴える感動するシーンのはずなのにいっちばんホラーだった。怖かった〜顔!「ああこれは紛れもなくジョーカー以上にジョーカーだ…」ってなりましたね。

『笑ふ男』の主人公を演じてたコンラート・ファイト『カリガリ博士』でチェザーレを演じてる人だと知りまして…見た目がちときもちわるいし(笑)この手の雰囲気はどうなんだろうと観るタイミングを完全に失っていたのですがこれを機に観てみようかなと思いました〜

あと『笑ふ男』お犬さまが大活躍で最高なので観る機会がありましたら、特にお犬好きな方はぜひそこも注目してみてください笑。