たいてぃー

月と雷のたいてぃーのレビュー・感想・評価

月と雷(2017年製作の映画)
3.6
原作は未読であるが、角田光代ってことと、主演が初音映莉子で鑑賞。初音が主演した「ミツコ感覚」は、不思議なニュアンスの作品で、これを演じた初音には、思い入れが強い。本作も過去とは決別したいが、捨てきれないって微妙な役をさりげなく演じる。
初音演じる泰子の幼年期に半年間だけ、一緒に暮らした智が、突如現れる。この智役に高良健吾。監督が安藤尋でR15であり、この二人の濃厚なシーンが出てくる。いつまでも過去に捕らわれている泰子のこの行動は、葛藤と言えば、それまでなのだが、反発感は相当ある。
智は、その母とともに他人に頼る生き方をしている。そして、気まずくなると逃げ出す。母の直子役は草刈民代。「何か予感があると出ていきたくなる。それは、雨が降る前の雷のよう。」そして智は、「あなたは、毎日お菓子だけでも生きていけるって、言われた。」この生活感の無さに、何故か魅力を感じた。この二人の演技力がそう思わせるのか。まあ、こんな親子の生き方もありじゃないかって、ちょっと共感。安藤監督は、こんな情感を田舎の風景を絡め、長回しを多用し上手く表現している。
あと役者では黒田大輔。泰子の恋人役だが智の登場により、焦ったのか泰子に無理矢理、強要する。その時の言動が呆れる。この人物も普通じゃない感がたっぷり。それと、泰子の父親役に村上淳。回想シーンのみだけど、台所で酒を飲むシーンには、哀愁が漂う。泰子が悩み苦しむのは、この父のせいなんだけど、何か許せる気になる。
と言うことで、普通じゃない人物が多数出てくる作品。だけど、なんとなく共感できるって、不思議な作品。やっぱり原作がいいってことなのか。それとも、本調有香の脚本がいいのか。