真田ピロシキ

蜘蛛の巣を払う女の真田ピロシキのレビュー・感想・評価

蜘蛛の巣を払う女(2018年製作の映画)
3.2
この映画は1作しか作られなかったフィンチャー版『ドラゴン・タトゥーの女』の続きに当たるのだろうか。それともスウェーデンの三部作に続く物語という位置付け?ミカエルの話から察するにスウェーデン版が下敷きにされてるように思われるがそこのところがよく分からないので冒頭のシーンからして困惑気味。スウェーデン版では父親と一緒に巨漢の兄貴がいたはずだが妹?どうやら原作の方では存在を言及されていたらしいが見てる時は知らなかったので、この妹に違和感を覚えていました。

映画としては全体的にアクション映画に寄せてきた印象。天才ハッカーリスベットが主人公なので拐われた子供を乗せた車をエアバッグ作動させて止めたり空港の保安室に拘束されているNSA職員ニーダムを解放したりするのにハッキングスキルを活用して見てて面白いのだが、どうにもこの辺ハッキングを題材にしたゲームを見ているような思いを抱いた。ゲームでできそうなのよどれも。やった事ないが『ウォッチドッグス』にありそう。完璧にアクション映画に向かったと感じたのはクライマックスの狙撃誘導で解決策が射殺になってしまったのは完全にサスペンスから逸脱してて残念だし増々以てゲーム的。原作者が本作から変わってるのでそれで方向性も変わったのだろうか。

このシリーズは性暴力が大きなテーマで最初にリスベットが富豪のDVから妻と子を救い出すように受け継がれており、悪役に当たる妹のカミラも救われなかった被害者で性犯罪者用の自警団であるリスベットの心を揺さぶる。救いの手を振り切って残ったカミラの発言は逆恨みなのだけれど、あの年で父の邪悪さに気付きあまつさえ逃れるなんて到底出来やしない事を思えば哀れだ。リスベットが幼い頃から超人的な思考行動力を持っているのであって、それ故に逃げ出せなかった自分に後悔と共に姉への負い目と憎しみを持つようになったのかもしれない。この二人の関係性はなかなか面白い映画だったと思う。