このレビューはネタバレを含みます
乾いたパレード
2010年4月4日 0時43分レビュー
2010年作品。ベルリン映画祭国際評論家連盟賞受賞。脚本、監督行定勲。原作吉田修一。
原作ファン、吉田ファンの自分。
大好きな小説。読んでから見るは、ない方向な自分。映画が活字より好きなんで、どちらかというと見てから読む派です。事前想像、心配半分、監督行定さん!(むむいい感じ)。
ネットカフェの広告、キャスト見てさらに超良さげなキャステイング。脚本も行定監督かぁ、気合はいってる。そんな感じ。
主役5人のファンの方、藤原竜也、香里奈、小出恵介、貫地谷しほり、林遣都、それぞれのファンの方是非どうぞ!
決して、明るくない、ラブラブでない、宣伝文句のような「日常がゆがむ」おはなし。
大学生の小出君。明るい今時純情っ男子。のんびり引きこもりラブリーな女性に貫地谷さん。「ウォーホールとバソキヤ」とのたまうツンツンな香里奈。謎の金髪君林君。映画会社勤務で「2001年宇宙の旅」が大好きな藤原竜也。
そんな五人のルームシェア、彼らの広場、彼らの部屋、整列してるが、心はいずこへ。
それぞれの心のパレード、乾いたパレードが今きしみ、整列は、ゆがみ、乱れる。
原作ファンとして納得な感じ。とても面白かったです。
俳優がそれぞれの持ち味を出し、キャラクターを生きてます。一見、オムニバス映画のような様相です。さすが、行定監督、後半から終盤魅せてくれます。
鍵は、「ラスト」。ここでかなり、「差」がでてくるかと思われます。原作的には、持ち味のエッセンスを上手に取り込んでおります。ゆきすぎ、原作からの著しい変化のようなものは、一切無し。
吉田修一さんの
「現代人のノーコミュニケーション」
「深く交わらない、かかわらない、デタッチメントな関係」
「闇、性癖」
それを行定監督が、抑制した演出と終盤までみせるダイアローグ。
ほぼノーズーム、固定、同画面フレームインも駆使し、ドラマを魅せてくれます。
「セカチュー」しか見ていませんが、やはり、カット、間と間の素晴らしい余韻、不穏な謎をぽつりぽつり、観客に伝えながら5人のパレードを導いてくれます。
音楽は、UA初期プロデューサーやキーボードで有名な朝本浩文さん。本当に原初的な「音」で勝負していて大変良かったです。
役柄的にすべて好きなんですが、香里奈さんと林君のシーンは、とても好きです。
貫地谷さんのぽわーんとした魅力と悲哀。
小出君の「純情」とまっすぐ。
林君の「うらみ」。
藤原くんの「イライラと見つめる方向、にえきらない関係」みんなそれぞれ乾いた心の「マイナス」を持ち寄る。
人間は、いろんな物を抱えていると思います。
それは、それぞれがそれぞれに「価値」をつみあげて、磨く。考え悩む。
そして乾いた脳内パレードの果てに答えを出して成長していくんでわないかと思います。自己探求、自己練磨。
それぞれのパレード、それぞれの喜怒哀楽、隠したい憎しみ、裏切り、知ってるふり。
決して明るい映画ではありません。原作の「闇」とリアルな群像ドラマを見せてくれます。
行定監督の乾いたパレードの5人の行方は、いかに?
行定監督ファンも是非どうぞ!
追伸
行定監督の初期作品も見てみたくなりました「贅沢な骨」「閉じる日」等々。