ゆず

ANEMONE/交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューションのゆずのレビュー・感想・評価

4.0
このシリーズは、喩えるなら万華鏡のようなもの。要素は同じでも角度を変えるだけで異なる光景が浮かび上がる。今作ANEMONEは、そんな万華鏡が映し出す可能性のひとつ。平易に言えば過去の劇場版「ポケットが虹でいっぱい」のようにパラレルワールドです。

前作ハイエボ1を「なり損ないの総集編」と酷評したけど、今作には満足。わけの分からなさは今作にもあるのだけど、今回は登場人物ほとんどがわけ分かってないので単純に謎として楽しめる。だんだんとアネモネの置かれた状況、今作でのエウレカの役割がわかってきた所で、妙に明るくて素敵な終盤へと突入していく。終盤の、それまで作品が溜め込んでいたエネルギーが一挙に解放されるシーンは、そこだけを切り取れば「ミライのミライ」や「ペンギン・ハイウェイ」の同時間帯を上回るパワーがあった。狂騒。ガリバー無双。謎の多幸感。

まったく新しいストーリーとはいえ、やはり過去のエウレカセブンを見ていた方が感慨深い内容になっている。初見の人にはたぶんハードSFに映る。エウレカがエウレカ自身の見る夢に囚われ、何が夢で夢じゃないかわからない、みたいなことを吐露するが、私も過去に「ポケ虹」のパラレルワールドや、TV続編「AO」を見てきて、どのエウレカが真のエウレカなのかとっくに分からない。いや、やはりオリジナルのTVシリーズのエウレカが起源なのだが、同時にあらゆる関連作品に並行して存在するのがエウレカであるといえる。たぶんおそらくもしかしたらそういったことを示唆していたあのフラッシュバックは胸熱。コミカライズも含めたすべてを受け止めて「すべて真のエウレカだ、真のエウレカセブンだ」と高らかに宣言するかのようなシーン。ああ…このシリーズはリミックスとリビルドを繰り返し多元宇宙論を展開するSFなんだな…とは思わなかったが、なんだかこれまでにふれてきたポケ虹やAO、ふれて来なかったメディアミックスの意味さえもスッと腑に落ちたような謎の説得力があった。どんなストーリーでもこの京田監督と名塚佳織が関わっていればエウレカセブンたりえることを証明してみせた作品といえる。(いや主人公レントン…)(しかも今作の主人公アネモネ…)

11/15 ANEMONE/交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション @TOHOシネマズ仙台
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