キナ

心と体とのキナのネタバレレビュー・内容・結末

心と体と(2017年製作の映画)
4.7

このレビューはネタバレを含みます

まともなコミュニケーションは取れず、何事も極端で不器用すぎて異質なマーリア。
記憶力や視力に長けていたし、彼女は発達障害的な性質なんだろうな。
最初はそのあまりの融通の利かなさに引いてしまったけど、密かな会話のシミュレーションや医師とのやり取りから彼女なりの努力が見て取れて胸打たれた。

鹿の夢の役割と意味が分かってからは、ドキドキしてたまらなくなった。
二頭の鹿の目が映るたびに、言葉が無いからこそ伝わる何かを伝え合っているような気がして。
少し不思議な密会を覗いているような気持ちになる。

恋心を自覚してからの、「普通」の枠から外れたマーリアの努力の仕方が一々おかしくて可愛くて、もう応援が止まらない。
小さな少女の成長を見守っているような愛しい感情が湧いてきた。

マーリアはもちろん、エンドレもあまり表情豊かな方ではないので、二人が顔を見合わせて微笑むたびにギュッとなって涙がこぼれてしまう。
本当に些細な瞬間も特別なことのように思えた。
きっとこの先も難しいことがあるかもしれないけど、共に朝を迎えた二人の笑顔と現れなくなった鹿の夢から、ささやかな幸福の未来が満ち満ちていることが伝わってきた。

冬の森の中の鹿、食肉工場、窓に映る姿など、映像がとても綺麗だった。
食肉工場に流れる血液と一度振られたマーリアが手首から流した血液の映像が重なって、でもその血の意味は全然違うことにハッとした。
音響とコロコロした音楽も素敵。
些細な音も丁寧に拾ってくれるのでASMRのような心地良さがあった。

人を受け止めて、優しくなれそうな映画。
静かにドラマチックでユニークさに溢れていて、とても好き。
キナ

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