JT

心と体とのJTのレビュー・感想・評価

心と体と(2017年製作の映画)
4.2
心と体は一致しない
人間の脆さと愉快なまでの単純さ
哀の感情を詰め込んだ静謐な傑作

2019年27本目
原題 『On Body and Soul』
去年見逃した一本です

人付き合いが苦手で孤独な女
左手が不自由で人生に喜びを失くした初老の男
ふたりは同じ夢を見ていて
夢の中で鹿として冬の森で出会うのだった

幻想的な夢の中で出会うふたりは現実ではすれ違う
心が求めていても体も求めているとは限らない
孤独な女は潔癖症で人を拒む
初老の男は人生に意義をなくす
夢がふたりの距離を近づける
次第に互いに惹かれ合うが男性との接し方を知らない女は不本意に男を遠ざける
真に受ける男も女を遠ざける
心が精通した関係にあっても肉体的な関係には必ずしも結びつくことはなくて逆も然り
相手を好きになることで傷つき
思いやりのない言動で相手を傷つける
恋をする、愛することが時には血を流させてしまう
それでもふたりを引き寄せたのは運命だった
テーブルに垂れた水やごみを綺麗に拭き取っていた女も今では男が食べたパンのクズを丁寧に掬い上げる
そんな素朴で優しいカットで幕を閉じるのだった

普段笑顔をみせないふたりがクスッとしたり
コミュ症な女が会話の練習を人形でしたり
緊張で思わず変なことを言ってしまったり
可愛らしく微笑ましい描写で溢れていて
美しいだけでない綺麗で神々しい映像や演技と
静かに進む物語に人間的描写の数々
その全てに恋をしてしまうような作品でした
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