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修道士は沈黙するのInagaquilalaのレビュー・感想・評価

修道士は沈黙する(2016年製作の映画)
4.0
「グレート・ビューティー 追憶のローマ」のトニ・セルビッロ扮する修道士が、ドイツのリゾート地ハイリゲンダムで開催されたG8財相会議に招かれ、そこで起きた国際通貨基金の専務理事の不可解な死に関わるという物語。G8の財相会議と修道士という取り合わせに惹かれて、劇場に足を運ぶ。修道士は専務理事の死に深く関わった人物として、「殺人」の嫌疑までかけられるが、宗派の決まりにより、真相を語らず、沈黙を守る。

監督のロベルト・アンドの前作「ローマに消えた男」を観ているが、これもかなり硬派な政治ドラマとなっている。しかも、イタリアの作品にもかかわらず、舞台は北ドイツのリゾート地。バルト海の薄く垂れ込めたビーチリゾートの様子がたびたび映され、このドラマの重厚で陰鬱なムードを演出する。かなりメッセージ性に溢れた内容ともなっており、観応えは充分だ。

「殺人」事件と各国財相の政治的駆け引きと世界経済をひっくり返す陰謀。それに対峙するかたちで宗教の側からそれらを断罪していく主人公の修道師。一見、結びつかないものが、見事にひとつの作品のなかで、強烈なメッセージとともに、群像劇が進行していく。ロベルト・アンドは、なかなか硬派な映画監督だ。前作でも監督とコンビを組んだ、トニ・セルビッロがまたまた好演。「グレート・ビューティー 追憶のローマ」で見せた軽みとは、また異なった硬派な演技を展開している。好きだな、このイタリア人俳優。
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