湯林檎

しあわせの絵の具 愛を描く人 モード・ルイスの湯林檎のレビュー・感想・評価

4.9
ずっとこのような映画作品を求めて探していた。そして、ついに理想の映画に出会えた。
一応ジャンルとしてはドラマ/ロマンスとなっているものの、決してキュンキュンするシーンがあるわけではない。
しかし、史実から脚色はされているものの本当の意味で"真実の愛の物語"であると思える。

また、私は音楽に次いで美術も好きであるので美術と人間ドラマ&ラブロマンスとなのも高得点の要因の1つ👍

まず映画のプロットとして、リウマチを患い身体に障がいがあるものの絵の才能に恵まれた女性モードと粗暴で無愛想でありながらも情の深い男性エルヴェットのはみ出しも者同士の素朴だが深い愛の物語というのも多くの人の共感を得やすいのではないだろうか。とにかくエルヴェットの最初の出会った時の印象は決して良くないしむしろちょっとだけ腹立たしい。そんな出会いから共同生活を経てお互い素朴な生活を好み外観だけではないお互いの良さに気づきやがて夫婦になる。この過程だけでも時間をかけて描いていてすごく丁寧だと感じた。

結婚後、モードはサンドラというそこそこ裕福な女性に才能を見出されて以降様々な人から称賛を貰いやがてカナダで最も有名な画家の1人となる。
マスコミで取り上げられてからは顔を晒され私生活にも邪魔が入り、夫のエルヴェットは障がいのある画家モード・ルイスの夫として世間からレッテルを貼られる。エルヴェットはモードと暮らすことに不自由さがあることは分かっていたもののモードの辛い過去に向き合おうとすればするほど言葉が空回りしてしまう。身体不自由だけでなく言動面でも決して器用ではないモードを演じたサリー・ホーキンスと複雑なエルヴェットの心情を自然に演じていたイーサン・ホークの演技は本当にお見事。何か賞を与えたい気持ちで山々だ。

私のこの映画を観て結婚カウンセラーをやっている人が以前言っていたことを少し思い出した。夫婦になって長年したら恋人と同じように毎日相手の顔見てドキドキしたりキュンキュンしたりするわけがないと。その為恋愛結婚は離婚する確率が高めであるということを。本気で結婚をしたいのなら恋愛から切り離して考えなくてはいけないということを。愛というものは簡単には育たないことを。結婚というのは2人で愛を一緒に育てていくことだということを。
そう思うとモードとエルヴェットはまさに2人で生涯かけて共に愛を育て切ることのできた幸運な夫婦の1組なのだろう。

最後に、この作品がAmazonPrimeVideoで観られたことに感謝しかない。
改めて後からじんわりと心の奥底に残る素敵な作品と出会えて本当に良かった。
湯林檎

湯林檎