チョマサ

デトロイトのチョマサのレビュー・感想・評価

デトロイト(2017年製作の映画)
5.0
黒人移民の簡単な歴史アニメから暴動直前のデトロイトに切り替わる。
暴動の発生からモーテルの惨劇、そして裁判から各々のその後、とくにアルジー・スミス演じるラリーがどんな人生を歩んだか描かれる。最初はドキュメンタリーチックに体験させるのかと思ったけど、伝記っぽい展開になるのが意外だった。


いろいろ褒められてるけど、やっぱりモーテルの描写がすごかった。尋問前の黒人がどんな生活をしているか見せる寸劇からの最悪な実演で、観ていて気の毒すぎた。オースティン・エベールの州兵の態度やウィル・ポールターの警官から出る、こんな差別的な態度を普段からとってるのが分かるのが一番ヤバい。人権に絡む問題だから撤退するとか、間違ってるのが内心わかってるけど止めないんだろうな。ウィル・ポールターとアルジー・スミスのふたりがこの映画のメインだった。残っているドキュメンタリー映像を真似た撮影やライブ感のある編集もいいから、体験するには映画館で観るのがいいと思う。

この映画で描かれる差別って、別に黒人に限ったことじゃない。銃が見つからなくて代わりに何かないかっていうところは、憎しみが先んじて論理的に行動できてないし、ネットでもこういう人はよく見る。考えが後から来る人。Metoo運動とかでカトリーヌ・ドヌーヴやマイケル・ダグラス、ウディ・アレンが槍玉に挙がってるのを見るとポールターの行動と批判してる人が似てる。後から出たことを後悔してるとか、グループに向けたアピールでしかないと思うんだが。特にウディ・アレンは前から言われてた性的虐待問題を運動に乗じてまた追求されてるように思ってしまう。

『デトロイト』があんまりアカデミー賞で支持されなかった理由に、扱ってる問題もあるけど、警官たちの行動や態度が、リベラルとかフェミニズムの人達の行動と重なって、セクハラ告発から始まる彼らの運動に水を差すところがあるんじゃないかって、論拠もないけどそういうことを考えた。
そういった時勢に逆行してる要素があると思う。
よく考えたらハリウッドはこれから女性天下になっていくんだろうか。


この映画の公開直前にアカデミー賞のノミネートが発表されたが、本命だったはずの『デトロイト』の名前はなかった。本作の内容からしてけっこう暴力的だし、時勢的にMetoo運動から女性の権利運動がメインになってるからあんまり支持を集めなかったのかなと思った。黒人の差別問題を扱うのが想像以上にデリケートなのかもしんない。『レディ・バード』『シェイプ・オブ・ウォーター』『スリー・ビルボード』とか、女性がメインの作品や安全牌なのが目立ってる。『それでも夜が明ける』とかの頃ならまだチャンスがあったんだろうか。

一月末に公開されたけど、地元の映画館じゃもう週一になってしまった。公開作品が多すぎるのもあるけど、ノミネートを逃したのがデカい。でも、この映画は特に重要な作品になると思うから、もっと見られていい作品だと思うんだよな。アカデミー賞がガン無視した作品として有名になると思う。
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