takanoひねもすのたり

ありふれた悪事のtakanoひねもすのたりのレビュー・感想・評価

ありふれた悪事(2017年製作の映画)
3.3
軍事独裁時代の韓国国家の闇を描いた社会派サスペンス。

平凡な刑事がある連続殺人事件の捜査に当たるが、情報機関の依頼で捏造捜索に手を染め、やがてそれはのっぴきらない状況へと追い込まれてゆくというヘビーな内容。

チャン・ヒョク目当てで鑑賞。
彼は情報機関の室長の役、敏腕冷徹、刑事に捜索を捏造させる側の人間、悪役。
涼しい顔で指示を出す場面での、スーツ姿の決まり具合も良かったですが、土砂降りの雨の中、刑事に拉致られ一方的にボコられる場面が、これがまた……良い……。

刑事の彼は、上から指示されるままのシナリオで犯人を逮捕し暴行して無理に自白を引き出し、ここで一旦OKとしていて。
足の悪い息子の手術と治療全てに便宜をはかってくれるというし、カツカツの生活から抜け出せたし。

しかし刑事の信頼する先輩記者(キム・サンホ)が、情報局による逮捕・拷問で死亡。
しかも直前に刑事との関わりを庇う行動を取っていたことを知った彼は葛藤の末に行動に出ることを決意。ここから彼の反撃が。

反体制派への拷問や、口止め工作の非人道的な手段、国家ぐるみで黙認していたというから、民主化以前の韓国のエゲつない闇の歴史を垣間見た感じでした。
もう拷問がひたすら痛そうで痛そうで……同じ人間に対して平然と暴力を行使できるっていうのは、平民を虫けらのごとく見ているからで、国家に逆らう人間は、害虫にしか見えないんだろう……とぼんやり思いました。

韓国に限らず、こういう歴史が繰り返されないことを願います。