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グッバイ・ゴダール!のpikaのネタバレレビュー・内容・結末

グッバイ・ゴダール!(2017年製作の映画)
2.5

このレビューはネタバレを含みます

この映画を見て良かったのは、いくら監督作を見てもいまいち好きになれなかったゴダールに興味を持てたこと。過去の作品は全て死んだもので、革命をしていかねば、新しいものを生まねば死んだゾンビも同然と、思想と行動に苦悩するゴダールの姿がめちゃくちゃ刺さった。
ゴダールを見ようと腰を上げるのは結構しんどかったけどこれ見て意欲が湧いた。一回見たやつもまた見てみよう。

企画勝ちなので作ると決まった時点で見る人も決まってるし後は監督が好き勝手にできるからって上辺だけ掬った二次創作のようになっている。オマージュぽいのを入れたら満足するだろみたいな目配せだらけ。
元となった自伝本を読めば良い、と見終わってそう結論づけてしまうのなら映画としての存在意義はあるのかみたいな感じ。
ヴィアゼムスキーの自伝が原作なのにゴダールに失望することと画的にセックスの相手として描かれるばかり。1女優のことよりも世界的巨匠をクローズアップしたいというのは知名度的に理解できるが、ゴダールが思想に映画にと一番苦悩したであろう時期を舞台にしていて人物ドラマとしてかなり映画映えするであろうところをなぜ広げないのか。そこで『ヴィアゼムスキーの自伝だから』って中途半端に男女の話へと舵取りされたら単なるシーンの羅列にしかならない。そのシーンも上辺だけの二次創作みたいに処理されてるから何にも面白くない。
ゴダールは20作弱しか見てないし全く思い入れもないけどファンはキレるんじゃないなと思った。どうなんだろ。ヴィアゼムスキーファンは喜ぶのかな。夫婦ともに有名人の恋愛を映画にするってところで仕方がないのだろうか。ゴダールのめんどくさい感じは映画見てたり多少背景知ってればわかるしそこはいいんだけど、まだ存命の人物で、しかも映画業界の世界的に有名な人物に対して失礼とかそういう概念はないのかなとは感じた。元妻が書いた本をそのまま映画にしただけなんで、ってそれを相手のフィールドである映画で、しかもオマージュしまくって作るなんてちょっと厚かましすぎやしませんか?と。
中盤の「勝手にしやがれ」の成功と映画革命で巨匠として祭り上げられたゴダールは世間からの自分に対する偶像に苦悩し、革命に生きようと苦悩するところは感動した。でも後から考えるとそこらへんは真っ当に繋いで見せているだけでヘタに演出を入れていない。映画全体でいうと単なる説明でしかない部分だ。
映画を愛したゴダール=政治に傾倒する前のゴダールで、今のゴダールは死んで再生したとかは盟友たちとの決別含め掘り下げるとめちゃくちゃ面白いしゴダールという人物像を見せるのに重要な部分であるのに単に友人や愛する人たちと繋がれなくなった哀れなクソ男みたいに処理されているように見える。
考えれば考えるほどヴィアゼムスキーの書いた本というだけなら「あのゴダールの世間の知らない姿」を知る的な面白さで止まっていられるのに、映画として完成はさせちゃいけない映画という気がした。


ベッドシーンはひどいしネガポジ演出はうざいし眼鏡が割れる云々や「裁かるるジャンヌ」を見ながら〜ってのもドヤドヤしまくってて気恥ずかしい。本音と建前の字幕処理はオマージュなの?裸のシーンは面白いと思ってやってるの?寒々しい。
恋愛の顛末は良いとしてもブルジョワ批判をしながら本人もブルジョワであると苦悩した部分を滑稽に見せたり、面白ければ良いと安易に作って、ゴダールというアイコンを利用しているようにしか見えない。

ゴダールを演じきったルイ・ガレルはめちゃくちゃ良かったし、ベルトルッチとの口論シーン見てトリュフォーともこんな感じで分かれたのかなと、再現映像を見れて面白かった。
ゴダールにルイ・ガレルが配役されたのは「こんな企画しちゃったけどゴダールもあのガレルの息子だから許容してくれるでしょ」という予防線だったりして。
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