みほみほ

きっと、いい日が待っているのみほみほのレビュー・感想・評価

4.4
🇩🇰2023年75本目🇩🇰(字幕)

養育する親が居ないというだけで、ここまで人生ハードモードを強いられてしまうのか…
誰もがいつ陥るかも分からぬ状況なのに、夢や希望を根こそぎ奪い去り、冷酷な現実を思い知らせようとする施設側の悪しき原動力はどこから湧いてくるのかと、その心理が不思議で仕方なかった。

まるで刑務所だと錯覚するけど、ろくにご飯を食べさせてもらえてないし、暴行や規律は刑務所並みなので、まだ刑務所の方がマシなのではないかとすら思ってしまう。軍隊みたいに規律があるかと思えば、弱肉強食を強いる世界で子供達を争わせたり、指導の為と言いながらも体罰もどこか感情的で、施設の子供達の事を後ろ盾のない所有物を預かってるくらいにしか考えていないのがよく分かる。そうでもない限り、あそこまで残忍になれるはずがない。

元々兄弟も万引き癖があったりと問題児だったからあの施設に振られたのかもしれないけど、子供にとって規律は大切なのは分かるが、暴力や恐怖政治で支配したり、将来を決めつけたり、内部で争わせる事を常習化したところで心に残るのは傷と絶望、そして悲観的な考えだけで、彼らの人生にとってプラスになるものが何ひとつない。

施設を牛耳る者の中に階級意識のようなものが存在するからこそ、親なしの子は高望みはしてはいけないという概念を押し付けてるのではないかと感じた。なんと愚かな事なのか……

本作を眺めながら、悔しさと悲しさに拳を握りしめる感覚で「ショーシャンクの空に」が頭をよぎったけど、刑務所という罪を犯した者達が収容される場所と児童養護施設という本来子供を守る為の場所で同じような事が起きてる事がショック過ぎて、直視できないような酷いシーンはもはや現実とは思えず笑ってしまうくらいでした。

兄と弟、それぞれがお互いを思い助け合って掴み取るラストは何とも言い難い感動がありました。「ショーシャンクの空に」のような大きな希望は見えなかったけど、現実だからこその真実味というか、この先の人生どうか楽しく明るく生きて欲しいという思いで見守る気持ちになれました。

おやおや…この空気感好みだぞ?もしや?と思ったらデンマーク映画で、その完成度と登場人物の見せ方に引き込まれてあっという間の2時間。殆ど泣いてたから、冬の乾燥とメイクで炎症起こしてた涙袋がまた腫れ上がり悲惨な顔になりましたが、本作を観た満足感の方が大きくてどうでもよくなりました。

女の先生の存在だけが唯一救いだったけど、なかなか一筋の光が指すことの難しい閉鎖的な世界に普通の心を持った先生が入ってきてくれたことも真実だといいな。この手の実話ベースの作品って、現実を調べたらもっと悲惨だったり映画のようには進まなかったりするから調べるのが恐いけど、映画だから美化されてる部分もかなりあるとは思うので、現実でもいい事が起きて事件の発覚に繋がっている事を祈りたい。

なんだか話題のマッツ・ミケルセンの実兄、ラース・ミケルセンが嫌な校長を熱演。顔も見たくない程の悪役っぷり。個人的には校長よりもその下で誰よりも認められたがってるがなかなか評価されない先生が印象に残った。

それを凌ぐインパクトを与えたのが、弟エルマー役の子。この子てっきり「チャーリーとチョコレート工場」のあの子だと思っていたけど違った。初めて見たけど、もう何度も見たかのような気持ちになってたし、最初はまだ幼かったのに最後には顔つきがガラリと変わり、施設に適応しながら必死に生きてる姿を熱演しており、素晴らしかった。ラストスパートは彼の映画だ!!

兄エリック役の子も、この子絶対見た事ある!と錯覚してたのに、初めましてだったのが意外。この兄弟の演技が誰よりも輝いていて、いつか来るいい日を信じて耐え抜く強い姿に胸を突き動かされました。周りにも少しずつ影響を与えていったのも素敵でした。

体罰とかいじめとかしんどそうだなと敬遠していたけど、この映画はただ絶望させるのではなく生き抜く強さを教えて貰える作品なので、多くの人に観て欲しいです。本当に涙が止まらないけど、とてもいい映画!!
みほみほ

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