いののん

きっと、いい日が待っているのいののんのレビュー・感想・評価

4.6


ずっと大事にしてきた絵本が何冊かある。そのうちの1冊がオランダ生まれの絵本作家レオ・レオニの『フレデリック』という絵本だ(高校生の時に、訳者谷川俊太郎さんにサインをしてもらった本なのです←自慢!)。
野ねずみのフレデリックが、想像する力・物語る力で、みんなをちょっぴり幸せにする話だ。(ラストのフレデリックの一言がもう好きすぎてたまりません。)



今作は、あまりに苛酷な話で辛すぎて、開始15分くらいのところで、観に来るんじゃなかったと早くも後悔した。別に知らなくても良かったんじゃね? なんて。
これじゃあ、養護施設の話というよりも、強制収容所の話みたいだ。観ていて息が苦しくなる。

でも、あるところでくる(劇的な)一連のシーンによって、
私の浅ましい後悔は、宇宙の彼方へ吹き飛んだ。

弟のエルマーが、想像する力・物語る力で、皆の心に幸せをもたらすのだ。
それは、人類にとってはちいさな一歩かもしれないけど、
彼ら1人ひとりにとっては、大きな飛躍である。
その時、ずっと暗い色彩だった養護施設に、確かな光が差し込まれるのだ。
それはそれはステキなシークエンスであった。

(ここから、後ろ向きだった私の気持ちは、前向きな気持ちへと転換していきました。大好きな『フレデリック』の話とも重なり、やがてこれは希望の話になるのだと確信し、辛くても逃げないで観ることができました。)


兄エリックの、弟に対する真っ直ぐで力強い愛。
兄を救うため、もう逃げないと決意する弟。
兄弟の強い愛と、勇気によって、
最後にもうひとつ、奇跡を起こす。
その奇跡は、皆の心に深く刻み込まれ、
養護施設で過ごした者たちを、きっとずっと励ましていくだろう。
この映画を観た者を、きっとずっと励ましていくだろう。
そんな風に、感じている。


(それから、語り部を、あの男の子にしたことも、とても良かったと思う。)
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