ももも

シェイプ・オブ・ウォーターのももものネタバレレビュー・内容・結末

4.0

このレビューはネタバレを含みます

最後までしっかり見るべき映画!

というのも、最後の最後まで観て、本当の意味でサリー・ホーキンスの演技の素晴らしさがわかるから。

ストーリーは魚人と発話障害の女性の純愛モノに歴史的背景が絡んで葛藤する話なのだけど、2人の間に育まれる愛の形が、サリー・ホーキンスの言葉のない演技から溢れ出てくるようだった。

質素なのに色気があって、無音だけれど思い切った行動力でものすごいインパクトを与えてくるエライザ。魚人とセックスしちゃおうと思うところも、お風呂場に水を入れて抱き合うところも、やってのけちゃう彼女がおもしろい。彼女の行動力が優れているのか、愛が原動力になっているのか。

最後のナレーションはエライザの同居人役リチャード・ジェンキンスだったと思うのだけど、彼のエライザへの愛情が伝わってくるナレーションで素晴らしかった。ここに来て泣かされた。短いナレーションなのだけど、これを聴きながら、映画2時間で見たエライザのあんな顔やこんな顔が浮かんでくるようで、ここでまたサリー・ホーキンスの演技の素晴らしさを感じた。

彼女の演技で言うと、エライザがジャイルズに魚人を救出しなければならないことを説明するシーンも本当に良かった。
逃げようとするジャイルズに必死で彼への思いを伝えるエライザ。自分のことを障害者ではなく、1人の人間として見てくれた、と。それって、この映画においてだけではなくて、誰にでも共通するものすごい大事なキーワードで、でもそれって本当に本当に難しいことで、自然に出来るこの魚人と、そして魚人をバケモノではなく1人の愛する相手として見れるエライザは、こう言う言い方をするのは語弊を生むかもしれないけれど、人間として優れていると私は思った。

このシーンの後ゲイのジャイルズは好きな男性が働くバーに行くけれど、そこで肌の色やセクシュアリティを理由に差別的な扱いを目の当たりにする。エライザのあの台詞の後にこのシーンを持ってきたところが、差別や怒りで満ち溢れた今の時代に大きなメッセージを残している。
「彼を助けなければ私たちは人間じゃない」というような台詞があったけれど、グサリと胸に刺さる。
ただの純愛映画ではなく、人を1人の人間として見ることの美しさを示した映画でもあった。
肌の色、セクシュアル・マイノリティ、女性を侮辱するような発言も度々作中に出て来た。こういう風に映画に出てくると「ひどい」って気づくのに、肝心の現実社会は無意識のうちに排他的になってしまっていると、つくづく感じる。

それから『ドリーム』でもNASAで活躍した黒人女性を演じたオクタヴィア・スペンサーも、ユーモアたっぷりで面白かった。エライザとは対象的にペチャクチャペチャクチャ常時喋っているゼルダ。心のやさしいキャラクターでもあり、エライザには欠かせないもう1人の親友で、素敵な演技と役作りだった。

それから卵がエロい。これから卵を正気で食べれなくなりそうなくらいエロい。ギレルモ・デル・トロ監督の独特の変態感もまた、面白かった。

それから作中度々流れる昔の映像、何の映像なのか残念ながら私はわからなかったけれど、こういうところにもデル・トロ監督の映像への愛を感じました。
ももも

ももも