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彼女の人生は間違いじゃないのKUBOのレビュー・感想・評価

3.5
7月3本目の試写会は「彼女の人生は間違いじゃない」。

難しい作品だった。どっぷり「3.11」の映画でした。

仮設住宅に住む親娘。父は働かず、保証金でパチンコ屋通いの毎日。市役所で働く娘は、週末になると高速バスで東京へ通い、デリヘル嬢をしている。「3.11」から逃れられず、みんな壊れている。

普段は青春映画の匠、廣木隆一監督が、自らの処女小説を映画化した作品だが、ちょっと触れにくいところまで被災地で暮らす人々の心に踏み込んで描けたのは、福島出身の廣木監督であればこそであろう。

主人公みゆきを演じた瀧内公美は文字通り体当たりの演技。みゆきの父を演じた光石研と共に、悶々とした日常の中で自分を壊そうとする、自分を取り戻そうとする被災者の気持ちを熱演している。

みゆきの元カレがなかなか前を向かず、ずっと後ろ姿で、やっと横を向いたところで「恋人たち」の篠原篤だとわかる。「恋人たち」の時は、その素朴さが奇跡的に作品にマッチしてすごい熱量の演技になったが、、、いつまで経っても下手だなぁ。俳優なら、あそこまでだらしない身体でベッドシーンしちゃダメでしょ(^^)

でも、考えてみると、篠原篤、光石研、安藤玉恵と「恋人たち」組多いなあ。

遺骨そのものも汚染されているものは居住地に埋葬できないとか、この作品で初めて知った。保証金目当てで仮設住宅に壺を売りに来る男が叫ぶ「保証金もらって毎日ゴロゴロしてやがって!」 フィクションの中に、ノンフィクションの匂いがする。

わかりやすい「結」はないが、ほのかな希望は感じさせるラストだ。廣木隆一の福島への想いを、瀧内公美の体当たりの演技を「感じる」映画です。
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