ひろゆき

リュミエール!のひろゆきのレビュー・感想・評価

リュミエール!(2016年製作の映画)
3.7
銀幕短評 (#222)

「リュミエール !」
2016年、フランス。 1時間 30分。

総合評価 74点。

短歌や俳句などの定型詩が、ときに自由詩よりも能弁にメッセージを送るように、50秒のカセをはめられた映画が多くを語ることがある。

意外なことに、映画の歴史は たかだか 120年程度だという(自動車のT型フォードが 110年と、ほぼ近い)。フランスでリュミエール兄弟(リュミエールは “光” の意でもある)が機材を開発して、それで撮ったモノクロ無声映画を公開し始めたのが、映画の歴史の始まりらしい。

この映画は、彼らの製作した膨大な映画のうち108本を次々に紹介しながら、ナレーターがそれらに分かりやすい解説(もちろんフランス語)を加えるという おもしろい趣向だ。また音楽がぴたりと合っている。

モノクロ無声映画といえば、チャップリンや「アーティスト」(#195、75点)が思い出されるが、揺籃期のこれらの短編は そのように こみいったものではなく、たった50秒のフィルムの制約のなかで、多少の演出を効かせた さながらホームビデオだ。

曲芸団の一編がいちばん気に入ったが、ほかにも 往来の通行、ペタンク、バックギャモン、登山、汽船、建造物、海、兵士、幼児、隊商 、世界の名勝、京都での剣道、気球、雑多な喜劇などなど、当時の風物と文化をよく記録している。

「光」(#185、日本、89点)で 「映画ってさ、だれかの人生とつながることじゃない?」というセリフがあったが、これら50秒の映画ひとつひとつで 当時の名もなき彼らと 名もなきわたしとは、確かに世界を共有している。
ひろゆき

ひろゆき