銀幕短評(#722)
「真紅の炎」(原題)
2010年、カナダ・フランス。2時間11分。
総合評価 15点。
ドニ・ビルヌーブ監督。
死者が生者に手紙を書くことがありますね。それを遺言(いごん)といいます。これはね、とても便利なことのように見える(タイムマシンのようにはたらく)いっぽうで、この映画のように死者の身勝手を振りまくことも多い。巻き込まれる生者(多くの場合 近親者)が迷惑に振り回される。人生を左右されることもあるかもしれない。死した かれ彼女自身は、じぶんの満足を求めて 無責任で身勝手な言明を不誠実に一方的に紙に残すし、そこには生者が従わせられる一種 無言の圧力がある。しかしこれらは、意味合いとしては 死者の傲慢のひとことに尽きますね。
ひとが死ぬ前になすべきことは、生者に つまりおなじ対等な生者どうしとして、真剣にむきあうことです。誤解のないように真意をていねいに伝えあう。だって、そのためのお茶でしょう? あれほど残酷な刻印があるでしょうか。それほど血が大切なのか。なんでもかでも あとに尾をひくことがいいのですか。死者の分(ぶ)を 完全に逸脱していますよ。
知らないほうがよいこともある。かれのいうことは ただしいですね。