銀幕短評(#722)
「市子」
2023年、日本。2時間5分。
総合評価 33点。
中盤までは期待がふくらんだのですが、それより先は はなしが膨らまずに 大失速しました。花のつぼみが咲かずにしおれるように。
最初のシーンを再び巻き戻すところ、あれは確かにせつないと思います。心中を察する。あの場面が この映画の芯ですね。しかし、それをのぞくと、登場人物の描写がきわめて表層的で、あまりに単簡に過ぎる。つまり、あっけない。掘り下げがない。
よくある時間の組み換えを交えて毎度毎度の暗転に余白を残す手法はまあよいとしても、映画が完了しても ああ余白のおおい映画だったなあという印象しか残らない。ここかしこで因果関係や ものごとの手順が支離滅裂なので 不快感が高まる。
映画のテーマについて。
最近よく思うのですが、じぶんのちからではどうしてもうまくいかないことは、(ここぞというときに)ひとに頼るしかない。救援をもとめる、困っているから助けてくださいと頼みこむ。そういう努力というか 周りへのはたらきかけをすることが不可欠ですね。じぶんのちからでちゃんとできることを放り出すのは無責任だが、そうではないのにいつまでもぐずぐずと援助をもとめないことは もっと無責任だ。ケガをひろげるし ひとを傷つける。卑怯なことだ。