銀幕短評(#723)
「658 km、陽子の旅」
2023年、日本。1時間53分。
総合評価 46点。
チャットモンチーの「シャングリラ」、いまだにときどきカラオケで歌いますよ。
携帯電話を川に落としたよ
笹船のように流れてったよ
気がつけばあんなちっぽけなもので
つながってたんだ
手ぶらになって歩いてみりゃ
楽かもしんないな
いい歌です。あのね、最近の若い子はね、”携帯電話” ということばを聞くと、きょとんとしますね。なんのことだろうと。
この映画は ざんねんながら はなしの幅がとてもせまい。出だしから主役のパーソナリティを極度に制約して、ものがたりの目的をピンポイントに特定して、はなしの穂(ほ)の継ぎかたを限定して、数人しかいない登場人物を紋切型にそろえて、スタート5分で読めてしまうゴールにぴたりと着地する。
わたしはいったい そのどこを楽しめばよいのでしょうか? せっかく自由表現を駆使できる映画という芸術分野なのに、すべてを既存のお仕着せの型に押しやっている。安易に乗っかっている。いかにも もったいないでしょう? 作り手も わたしも。
彼女は 最初のうちは単なるお地蔵さんでしたが、終盤の演技はさすがにすてきでしたね。あのひとの若いすがたは、別れたときのあのひとのそれでした。別れたひとは それ以上には年を取らないのだなあ。