いずみたつや

ミスター・ガラスのいずみたつやのネタバレレビュー・内容・結末

ミスター・ガラス(2019年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

おぉぉぉぉ!傑作じゃないですか!これだからシャマランはやめられない。

もうね、マーベルとかDCは、一生オオサカタワーで戦ってろよ!

すみません、違うんです、マーベルもDCも好きです。すみません(情緒不安定な感じで面白かったことがいくらか伝われば幸いです)。

改めて言うまでもないですが、本作が徹底的に”アメコミ超大作”とは違ったアプローチから「ヒーロー論」に挑戦していることは明らかです。

そもそも主人公たちの見た目は普通のおじさんだし、『アンブレイカブル』もそうでしたが、アクションは極めて単調でシンプル。

超大作的なオオサカタワーでのバトルを回避する、という展開からもその意志を汲み取ることができます。

また、本作で最も僕が心打たれたのは、マイノリティーの人々に向けたエールになっている点です。

“人と違う”ことが悪とみなされる世界に居場所がないと感じたり、自分に生きる価値などないと思い悩んでしまったりしている人々に向けて、「すべての人間に生きる意味はある」と高らかに宣言してみせたことは重要です。

自分自身もとても救われたような気がしました。

ヒーローは、自分を乗り越えて自我を確立する姿にこそ大きな感動があります。

その点で本作は、思わず涙が出るほど素晴らしかったです。

たとえミスター・ガラスという、決して許されてはいけない罪深き男の物語であっても、です。

僕は芸術に踏み越えていけない領域は存在しないと思っています。現実ではできないアプローチにしか描けない景色があることは間違いないので、倫理的な観点から価値判断はしたくありません。

ミスター・ガラスは大変な罪人であり、哀しき男であり、しかしながら本当の自分を受け入れ、胸を張って生きるためのショックを多くの人々に与えました。

そのなんとも表現しがたい新しい感動が、本作の魅力だと思います。