butasu

バーフバリ 王の凱旋のbutasuのネタバレレビュー・内容・結末

バーフバリ 王の凱旋(2017年製作の映画)
2.5

このレビューはネタバレを含みます

うーん前編が良すぎただけに、ちょっとイマイチに感じてしまった。本作は父を殺された子の復讐劇であり、この後編は主に父が殺されるまでの前半(全体の2/3くらい)と息子が復讐を果たす後半に分けられる。そしてこの前半がとにかく胸糞悪い。延々と、前編で王位継承が決まったはずの父の立場が奪われていく様子が描かれる。

最大の胸糞要因は、父の育ての母である、国母。前編では粋な采配と精神の強さで圧倒的なカリスマ性を見せていた国母は、この後編ではただのプライドが高く、全ての重要な決断を感情のみでくだすクズ中のクズ。自分は前編で国母のファンになっていたので、「こんなの国母じゃない…」と泣きそうになりながら観ていた。兄とその父親がクズなのは構わない、彼らは登場時から明らかな悪役なので。だが国母は立派な人間だったはずだ。どんなに兄がクズでも、最大権力を持つ国母がまともであればいくらでも抑え込むことは可能であったはず。

そして同じことは父の最も親密な側近であったはずのカッタッパにも言える。あれだけ父に心酔し名実共に親代わりであったにも関わらず、彼は命令だからという理由で父を刺し殺す。これにも心底ガッカリした。この刺殺シーンは前編のラストで見せられていたため、「実は殺していなかった」や「実は事故だった」「実は人質をとられているなどやむにやまれぬ事情があった」などの種明かしが当然あるものと期待して観ていた。しかし結果、本当に命令に従って殺しただけのシーンだったのである。じゃあ前編で見せない方が絶対に良かったと思うが。

そして終盤にようやく息子の復讐が始まるのだが、正直これはかなり感情移入しづらい。だって息子はついさっきまで田舎の集落で普通に育っていた、ただの腕っぷしが強いだけのヤンチャ男なのだ。何となく滝を上ってみたいという以外特に目的もなく暮らし、滝を上るときも上ってからも女に夢中でキャッキャイチャイチャしていた男なのだ。「え、こいつ本当に王の器なの…?こいつで大丈夫なの…?」という気持ちでいっぱい。敵を倒してすぐに王に即位しちゃうし。せめて父や母から幼い頃教わっていた、というエピソードがあればまだ納得もいったのかもしれないが、生まれた瞬間に生き別れになってるからなぁ。

この映画ってストーリー自体は特に目新しくもなくて、言ってしまえばほとんど「ライオン・キング」なのだが、あちらではちゃんと幼い息子が"王の資質"について父親と語るシーンとかが入っているから、全然納得度が違う。父が死ぬ理由もシンプルに父の兄による事故に見せかけた直接的な殺害であり、国母やカッタッパのような中途半端な人物を挟んだりしないし。

相変わらず映像はど迫力だし、アクションも面白い。それは確か。ただクライマックスまでに3〜4時間もこの映像を観ているため、最早それだけでは感動できなくなってしまったのも事実。ただラストに1対1で闘う二人が上裸になったときの筋肉のえげつなさには惚れ惚れした。そういえば主演俳優が全然イケメンじゃないのもジワジワと面白かったなぁ(叫ぶ声もなんだか迫力がなくて間抜け)。しかし不思議とインパクトがある顔で、一度見たら忘れない。ラスボスにあたる父の兄は普通の超イケメンなのに。

いずれにしてもインド映画の底力を見せつけられた作品だったのは間違いない。実際、映画としてのクオリティは後編の方が全然高いと思うし。ちょっと父バーフバリのことを好きになりすぎてしまったのが敗因。
butasu

butasu