トモ

生きる街のトモのレビュー・感想・評価

生きる街(2018年製作の映画)
4.8
生きる街

【あらすじ】
生まれ育った海沿いの町で漁師の夫、2人の子どもと幸せに過ごしていた佐藤千恵子(夏木マリ)の暮らしは2011年3月11日に一変。津波に流された夫は帰ってこない。それでもいつか夫が戻って来ると信じて千恵子は地元を離れずに生きている。あの日を境に今は離れて暮らす子供たちもまた癒えない傷を抱えていた。被災のトラウマから子供を持つことを恐れる娘の香苗(佐津川愛美)と、何でも震災のせいにして人生から逃げる息子の哲也(堀井新太)そんな家族の前に、かつて同じ町に住んでいたドヒョン(イ・ジョンヒョン)が韓国からある人の手紙を持ってやってくる。手紙に託された想いに触れたとき、止まっていた家族の時間がゆっくりと動き出す…。

これは非常に多くの被災者の中の一家族を描いたほんの一部かもしれないけど、それでも多くの心情を知ることが出来た、観て良かった。

周りが出来る大切な事は知る事、寄り添う事、同じ被害を出さないように教訓にする事だと思うんだけど、まず一歩は知る事。

主人公千恵子さんは元々世話好きな人、民宿を営み客と接する様はとても明るく生き生きとしている。

だが夜になると独り外の海を見つめ時に泣いている。

TVの押し寄せるような圧迫感が嫌いでラジオをよく聞いている。

恐らく誰にも見せていない姿、苦しんでいる姿を見られたくないのかも知れないし、余計な心配をかけたくないのかも知れないし、崩れそうな自分を必死に支えるためのバランスなのかも知れない。

外見にある強い部分があるからこその、内面のそういう繊細な部分のシーンが観てて辛かった。

だけど間違いなく人好きな千恵子さんのシーンは楽しく、微笑ましく、頼りがいのあるお母さんの姿。

そして「津波に流された人達の帰りを待つ」この気持ちと言葉だけは絶対に大切にしなければならないと痛感しました。

あの時から変わって無いこともあれば、頑張って乗り越えてきたこと、その過程、心情等、知るという事だけでも奥深いし復興途中だから遅いなんて事はないし。

夏木マリさん本当に素晴らしかった!

等身大を演じてみたかったという夏木マリさん。

演技(に見えない)がリアル過ぎて完全に世界に入り込んでしまいました。

医龍のようなカッコ良いドクターもいいけど、千恵子さんのような温かく明るいお母さん役増えるのかな、最高。

香苗と哲也の暮らしと葛藤もしっかりと描かれていました、故郷に思いが引きずられて前を向く事ができない。

そんな中故郷に戻るきっかけがあり家族が揃う事になる。

久しぶりの対面シーンとか親子3人の朝食のシーン凄く良かった、親子感が完璧だった。

夫に関わりのあった韓国人の息子から手渡される感謝の手紙、夫に関わる事実を知った時の千恵子さんの反応には貰い泣きしてしまった。

この作品脇役が凄く豪華!

菅原大吉さん、斎藤工さん、小柳友さん、内田理央さん、岡野真也さん、吉沢悠さん、原日出子さん、升毅さん、石倉三郎さん(写真)、仲間由紀恵さん(ラジオの声)等

あと外人の一人「SPEC零」のナンシー!?(関係無くてすいません)

夏木マリさん好きな人なら絶対、そして東日本大震災から7年経つ今是非とも観て欲しい作品です。

榊英雄監督や夏木マリさんのインタビューを読んでから観るのもオススメします。
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