ぽん

リバー・オブ・グラスのぽんのネタバレレビュー・内容・結末

リバー・オブ・グラス(1994年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

ケリー・ライカートの初監督作というので興味津々で鑑賞。

フツーの主婦が家庭を捨てて行きずりの男と逃避行、というプロットはとても「映画的」だけど、実際に展開されている物語は全然そうじゃない。

登場するのは、誰かが自分の子どもを引き取ってくれないかと妄想するアラサー主婦と、子ども部屋オジサンみたいでクリーピーな男。拳銃を手に逃走と言ってもその入手方法は間が抜けた偶然だし、唯一ドラマチックだった殺人の悲劇もただの勘違いに終わる。

全てが“寸足らず”で映画になりそこなっている・・・ハズなのに、どういう訳か面白くて目が離せなかった。男と女がモーテルに泊まってるのにベッドシーンが1回もないというのも正解。この2人が絡み合ってるところはちょっと見たくない。

で、行き当たりばったりの逃避行は、全てのことをやり損ねて何一つ完遂しないのだ。
このカタルシスの無さは、たぶん実人生の真理を言い当ててる気がする。

一方で、メインプロットとは関係ないところで、ジャズドラムを叩き続けるオヤジとか、プールに浮かんでアメンボみたいに手足を動かす主人公の姿は、どこか“余計”かつ“過剰”で、唯一無二のシーンとなって確実に映画になっていた。私の中の横山剣がイ~イネッ!って叫ぶ。

「人を殺して逃げている」という物語の主人公になった気分でいた女は、実は自分は殺人者ではなく何者でもなかったと気づいて呆然自失となる。でも、この数日の高揚感はホンモノだった訳で、結局、自分次第で自分が見ているこの世界は変わるということ。
最後に拳銃は元の場所に戻される。(これも偶然) そして白昼夢から覚めた彼女も元の場所に帰る・・・のかな?

倦もうが嘆こうが人生は続く。どーせなら機嫌よくいきたい。
ぽん

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