真田ピロシキ

ヴェノムの真田ピロシキのレビュー・感想・評価

ヴェノム(2018年製作の映画)
3.7
特に心当たりはないのに何故かとても疲れていて小難しくなくグロくなく長くなく複雑ではなくくだらなすぎもしない物を求めた贅沢に応えてくれる一級のそこそこ映画でした。マーベルのスパイダーマンがドータラみたいなマンガ知識はいらない。映画のほとんどを占めるのはマンガではなくB級寄生生物ホラー。どことなくHENTAIアニメっぽくもある(笑)でも酷いシーンのはずなのに直接的な描写を避けてるのでその辺の悪趣味さを流して見れるんですよ。こういう軽いハリウッド映画の方が素晴らしい時は度々ある。

ヴェノムさんは最も残虐な悪らしいです。その最も残虐な悪が配信開始時の宣伝で「日本のみんな俺の映画を配信するから見てくれよな」と言わせられてたのが何とも微笑ましい。そのキャラクター付けは映画を見ると全然間違っていなくて、エディに取り付いた時こそ血も涙もない冷血漢を装っていたものの、次第にコイツがただワルぶってるだけの結構可愛い奴だと判明する。ヴェノムがエディの中にある残虐性のメタファーになって良心とせめぎ合うみたいな真面目な話じゃないの。エディの恋愛にまでお節介焼いてくれる奴。敵のシンビオートに対して「いやー俺よりずっと強い。正直勝ち目はほとんどないな」とぶっちゃけるポンコツ加減が愛おしさを加速する。故郷で負け犬のヴェノム君は無双できる地球でやらかした同じ負け犬のエディに強いシンパシーを抱いて、そいつらが人間としてもシンビオートとしても勝ち組のボスに一泡吹かせてやる。たまんないね。上から目線のヒーロー様達には感じられなくなった良さがこのバディにはある。映画自体の偉ぶらなさが更に好感度増し増しにする。吹き替え版のトム・ハーディが気怠い感じで野沢那智のマクレーンを思い出させるのがまた良い。

ボス戦はありがちなアメコミ映画になってイマイチ。内容どうこう以前に今の自分にはこういう展開自体いらない。ホールで特殊部隊相手に無双してた時の方が出来の良い3Dアクションゲームのようで楽しい。分かりやすい弱点があるのでそれを絡めて展開して欲しかったのだがそこがジャンルの限界だろうか。アメコミ映画お約束の続編への引きがあって次に出すと予告してるのがまた似たような奴で萎え。長すぎるエンドロールを早送りしてたらないと思って安心してた別の映画の話を始められ更に萎えて止めた。こういうの頼むからやめてくれないすかね。私も段々と反感から無関心に移ってきているのでアメコミの悪口はもうなるべく言いませんから。

追記:弱点についての話は面白くて「スーパーマンのクリプトナイトね」と例えられていた。わざわざマーベルでDCの話をしたのは意図的と思われて、地元じゃ普通なのに地球では敵なしなヴェノム君の設定を踏まえるとスーパーマンを皮肉っているように感じた。あの設定て70年以上も後生大事に引きずらなくちゃいけないものとは思えないんだよね。本作はヒーローコミックとの距離感が良いです。