TAK44マグナム

ヴェノムのTAK44マグナムのレビュー・感想・評価

ヴェノム(2018年製作の映画)
3.1
正義と悪がひとつになる!


「スパイダーマン」の宿敵であるヴェノムを主人公としたダークヒーローアクション。
スパイダーマンがMCUに参加しているため、ソニーが権利を保有するヴェノムはスパイダーマンとは世界観は違えずとも共演するかどうかはボカした設定で製作されています。
将来的には共演する予定みたいですが・・・


主人公エディ・ブロック(トム・ハーディ)は腕利きのテレビ記者であったが、その正義感が災いして仕事も恋人も失ってしまう。
だが、失意の日々を過ごす彼に再びチャンスが訪れる。
それは因縁の相手であるドレイク率いるライフ財団が非合法の人体実験を繰り返しているとの内部告発であった。
告発をした女性学者と共に研究室に侵入したエディは、そこで既知のホームレスであるマリアを発見、保護しようとするが何者かに「寄生」されてしまう。
それこそ、財団が研究していた異星生命体「シンビオート」であった。
シンビオートと共生をはたしたことから財団に狙われるエディ。
しかし、自らを「ヴェノム」と名乗ったシンビオートは、エディを守る=自分を守るために追手たちを手玉にとるのであった。
やがて、シンビオートのリーダーであるライオットの目的が明らかになり、それを阻止するためにエディはヴェノムの力を借りる。
はたして、ライオットの恐るべき野望を阻むことが出来るのであろうか・・・!


まぁ、なんというか「寄生獣」感が強い。
寄生し続ければ生きながらえもするので、エディに固執するのも、仲間を裏切るのもよく分かりませんでした。
「寄生獣」のミギーは新一が死ぬと自分も死ぬし、人間という種を学習していたから新一と共に戦う説得力があったけれど、本作のヴェノムには「地球を守ろうと思うに至った経緯」、つまり納得できるエピソードが圧倒的に欠落しているんですよね。
正義感が非常に強いエディと同化して感化されたというのもあるんでしょうが、それにしてもエディとのバディ感が強まってゆくエピソードに欠けすぎています。
殆どがアクションとコミカルなシーンに費やされてしまって、軽口以外の「2人」の対話が少ない。
ただ「お前を気に入った」「ここを気に入った」だけ。
それで元々が凶暴で高等な生物がエディの為にあんなに命かけますかね?と疑問が生じて仕方がありませんでした。
どちらにしろ人を喰らわないと生きられないので、ライオット側につくのが普通じゃないでしょうか?
どうやら「負け犬」というのがキーワードなんだろうなとは思いましたが、なにせヴェノムの過去は描かれないので本作だけでは何が何だか分かりません。
ここが決定的に致命的なところで、「悪に近いダークヒーロー」とうたっていた割に、メチャクチャ普通のヒーローでしかありませんでした(ワイルドではありますが)。
深みがまったくなく、行動原理も分からないんだから仕方ないですよね。
ヴェノムが人を喰らう描写もゴアは控えめどころか全く見せないので、最凶の悪って感じはしませんし、ちょっとガラの悪いチンピラ風情ですよ(汗)
せめて美樹ちゃんに惚れて、愛のために仲間を裏切った「デビルマン(テレビアニメ版)」のように、単純でもよいから強い動機が欲しかった。
それでこそ、チンピラから戦士へと見方が変わるんじゃないでしょうか。

他の方の意見では、「ど根性ガエル」や「キルラキル」、またまた「ドラえもん」の様だというのがありました。
個人的には「寄生獣」や「アップグレード」が近いと思いましたが、確かにピョン吉や鮮血みたいな要素も見受けられます。
それらを混ぜ合わせた、つまりはよくある一体化バディものって事ですね。
ちょっとマイナーですけれど異星の者と同化して、かつての仲間と戦うという設定は「デトネイター・オーガン」などでも使われており、どこの国でも考えること(アイデア)は一緒なんだなと思いました。

そんな風に、お話自体も特に新鮮さはなく、
昨今のアメコミ映画としては全編とおして普通すぎます。
決してつまらなくはありませんが、特に燃えあがるようなエモさも無いというか。
エディとヴェノムのコンビ感は悪くはないので、あとはキャラクターで押してゆくしかないかもしれませんね。
そうなると、次作で本格的に登場するであろうカーネイジに期待したいところです。
悪が映えれば作品も映えますから。
ただ、今回のライオットもそうなのですが、ルックスや能力が似通った者同士のバトルは面白く描くのに工夫が必要だと思います。
たとえば「ブラックパンサー」でのブラックパンサーvsキルモンガーは、キルモンガーのキャラクターは最高なのにイマイチ盛り上がりに欠けていました。
なので、カーネイジにはヴェノムとは明らかに違う独特のキャラクター性と、体色以外ではっきりと差異がわかるビジュアルを与えてほしいです。
とりあえずウディ・ハレルソンの怪しさは、似合っているのか似合っていないのか微妙なカツラを含めて合格点かな(苦笑)


最後に、割とどうでもよい話。
財団のトップであるドレイクは宇宙開発や地球環境に並々ならぬ興味をもつエンジニアでありスーパーセレブという設定ですが、やはりモデルはイーロン・マスクでしょうかね。
イーロン・マスクといえばトニー・スタークのモデルとも言われている人物で、実際に「アイアンマン2」にもカメオ出演していたりしますが、性格もエキセントリックなところがあるみたいですし、多分そうなのでしょう。
アメリカのセレブは、ビル・ゲイツにしろスティーブ・ジョブスにしろ、こういったキャラクターのモデルにされることが多い印象ですけれど、やはりメディアを通して前面に出てくるからでしょうか。
日本だと、孫さんや三木谷さんがモデルのセレブってあまり出てこないような気もしますけれどね。

大好きな「ゾンビランド」シリーズのルーベン・フライシャーにしてはソツがなさすぎて、ちょっと期待外れでした。


セル・ブルーレイにて