木葉

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それから(2017年製作の映画)
3.8
モノクロの中で、キムミニの表情がいきいき輝いている。
実生活でも不倫を公表し、未だ堂々と愛を貫いているホン・サンスとキムミニの四作目。
一人の男(社長)と愛人、妻、それに巻き込まれる女キムミニ。この男がどうしようもなく身勝手で、どっちつかずで、狡い。映画は、男が愛人との愛を確かめ合う過去と新しく入った社員キムミニと男の会話を行ったりきたりしながら描かれるのだが、キムミニ演じるアルムが真正直で、誠実に生きていて、まるで女優キムミニが監督ホン・サンスの本性を探り当て、たしなめているようにも見える。
ホン・サンス作品はどうも苦手だが、少ない登場人物、よくある話をこうも面白可笑しく出来るのは、不倫の穴から抜けられないどうしようもない男、主人公をホン・サンスに重ね合わせ、私的映画、セルフパロディのような気がしてくるからか。。
漱石のそれからをリスペクトし、モノクロによりキムミニの線の細さ、横顔、真剣に語る表情が一層美しく、不倫の話から、なぜ生きるのか、この世界を信じ、今を大切に生きることを問うてくるところに、この映画の凄さがある。
公私混同を一気に芸術に昇華させ、信仰心の厚いアルム演じるキムミニに生き方を教わっているようで目から鱗だった。
木葉

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