いずみたつや

ジュピターズ・ムーンのいずみたつやのレビュー・感想・評価

ジュピターズ・ムーン(2017年製作の映画)
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「現実をただ描くことは、観念的な物語を生み出すだけ」という監督の言葉が非常に印象的で、これは言われてみればあの異色作『ホワイト・ゴッド』にも通じる考え方だと膝を打ちました。

確かに今作は寓話的アプローチによって、重力無視の驚くべき映像を作り出したのはもちろんのこと、宗教的な意味を強化し、さらには時空を超えたより普遍的な物語を紡ぐことに成功していると思います。

ジャンルとしても社会派ドラマにとどまらず、むしろSF的ビジュアル(空中浮遊の映像は本当に息を呑みます)や、アクションシーンの見事さにこそ魅せられます。また、堂々たるバディムービーでもあり、この映画自体がまさに空中浮遊しているような自由さで楽しませてくれます。

ムンドルッツォ監督の次回作はアメリカ映画らしいですが、どこに行ってもこの想像力と挑戦する姿勢を見せてほしいです。