一筋縄ではいかない面白さ。強かな女たちの愛憎劇。
単純に見るなら女王陛下の寵愛を得るための蹴落とし合いで、コメディ的な楽しさがある。
高い視座で見ると"権力"の不条理さ、人間関係に左右される政治のいい加減さ、理性ではなく一時の感情や快感で動くことの愚かさなどを滑稽に描いた一種のカリカチュアであるとも思った。要は政治や権力者に対する皮肉である。
手紙を読んで涙を流すアビゲイル、ラストシーンの女王とアビゲイルなど、意味深な場面が多いのでじっくり噛み締めたいタイプの作品だと思う。
自分は最初に見て咀嚼し切れなかったので、見終わった後にもう一度飛ばし飛ばしで見て上記の感想になった。もちろん、不親切な作りの映画ではないのでストーリーを追うだけでも充分に楽しい。
ずる賢い女性アビゲイルを演じるエマ・ストーンはとても新鮮に感じた。
見終わるとタイトル『お気に入り』もバリバリの皮肉だと分かり面白い。お気に入りになりたくて頑張って得たその地位の筈なのに。
女王陛下目線で見ても、彼女がサラとアビゲイルのどちらかを愛していたかは明白なのに結果はこれである。
その後の史実と併せて見るとより深みが増す。