はる

ザ・スクエア 思いやりの聖域のはるのレビュー・感想・評価

4.2
『逆転のトライアングル』が面白かったので同監督のパルム・ドールも授賞した本作を早速鑑賞。もともと気にはなっていた作品なんですが如何せんどういう内容なのかイマイチ想像がつかなかった為に手をつけずにここまで来てしまいました。

美術館の展示会を手掛けるキュレーターの主人公クリスティアンが財布とスマホをスられた事をキッカケに公私ともにトラブルが舞い込むといったストーリーなんですが、やっぱりこの監督はホント底意地が悪いですね。クリスティアンと部下の"お前が言い出したんだろ"問答からのテスラ激擦りという最高に気まずいスタートダッシュに始まり、コンドーム問答に少女爆破、モンキー人間と畳み掛けるブラック過ぎる笑いにもう病みつき。口汚い罵りや出口の見えない不条理さといった常に居心地の悪いこの空気感はなかなか他の作品では味わえないですね。

繰り返し登場する物乞いを中心に手を変え品を変え描かれる格差。そして富裕層の下品さ。前半のビュッフェの説明に全く聞く耳を持たないシーンや一人の男に猿真似をさせてアート云々と抜かす気持ち悪さ。主人公のクリスティアンもそんな馬鹿な富裕層の一人ではあるものの、一応は自分の行いを悔いて行動しようとしている分まだ望みはあるのかもしれません。

皆んなが目を背けようとする、なんなら見向きすらしない現実を『時計じかけのオレンジ』の如く無理矢理目をこじ開けて見せつけるように叩きつける強烈な風刺悲喜劇はリューベン・オストルンド監督にしか撮れないと思います。現在最も信頼できる作り手の一人です。
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