abokado

ミスター・ロンリーのabokadoのレビュー・感想・評価

ミスター・ロンリー(2007年製作の映画)
4.0
『昔から別人になりたかった』

あともう少し目が大きければ、背が高ければ、可愛ければ、頭が良ければ、うまく喋れたら。1度は誰しも頭がよぎる自分とは別の人間になれたら物事は変わり好転する。という想い。

この主人公はそんな人達の代表で毎日マイケルジャクソンになりきってる。そんな時に出会うマリリン、彼女に連れられ行き着いた先は仮の姿で生きている偽りの人間たちの集落。
傲慢で勝手なチャップリン(ドニ•ラヴァン)ヨハネパウロ2世、赤ずきんちゃん、シャーリーテンプルなどなど。
誰かの真似をして偽りの人格でなりきって生きていても切り離したかった自分は残っている。それを猛烈に伝えるのが『チャップリンよりヒトラーみたい』というマリリンの台詞。

マリリンも孤独を背負っていて家族がいても大勢で楽しいことをしても結局はひとりぼっち。この感覚って前に友人たちから聞いたみんなでワイワイすると楽しいけどふと自分だけその空間から切り離されたような物哀しい気分になるっていうのに似ている気がする。自分はお気楽人間なのでその孤独が分からずぼんやりとしていたがマリリンを見て理解。

全く別の話しで1人のシスターの生還により他のシスターの信仰の証とされ次々とシスターの奇跡を見せつけられるが奇跡なんてそこにはない。リアルな死がそこにあることを物語る。

大切な者の『死』により感じた感情はまんま自分自身であることに気付き自分でも知り得なかった自分を『再構築』していくラストが素晴らしい。

主人公が部屋にお別れを告げるシーン、ちょっと有名な首吊りの歌
孤独がたくさんで印象的。

胸にガンガン響く良い映画です。
abokado

abokado