こたつむり

血を吸う粘土のこたつむりのレビュー・感想・評価

血を吸う粘土(2017年製作の映画)
3.8
♪ 私だけが 私だけがいない世界に光はない 
  
ホラーとお笑いは紙一重。
粘土が血を吸う…という場面は正直なところ、シュールでした。

ホラーは“具体的に見せない”のがキモ。
想像力を刺激する表現のほうが良いのです。
しかし、本作では粘土がグネグネと動く姿を「これでもか、これでもか」と映します。

何しろ、本作を仕上げた監督さんの本業は特殊メイクアーティスト。そりゃあ、自分の得意とする分野を前面に出すのも当然の話。造形が主で物語が従なのです。

しかし、本作がスゴいのは。
その造形が物語を成立させ、物語を凌駕する叫び(妬み、嫉み、恨み…負の感情が根底に渦巻き、誰にも認められない孤独を増幅させて怨念となった形)を感じさせることなのです。

特に中盤の“作り上げる”場面は絶句の極み。
良い意味でも悪い意味でも“狂って”いました。
怖いというよりも気持ち悪い展開に食欲減退は確実です。

また、黒沢あすかさんの熱演が素晴らしく。
『冷たい熱帯魚』ほどではないですが見事に“狂って”いました。後から知るところによると、監督さんの配偶者だったのですね。監督さんの想いを見事に具現化した姿勢は感服の極み。素敵な夫婦だと思います。

まあ、そんなわけで。
カテゴリとしてはB級ホラーですが、それで斬り捨てるのは勿体ない作品。特に終盤でカタルシスを感じることが出来るのは稀有な存在。芸術に対して思うところが無ければ意味不明で終わる可能性もありますけど…。

最後に余談として。
本作のエンディングテーマは藤田恵名さんの楽曲。あー。この御方が“脱げる歌手”で話題の女性ですね。Yahoo!ニュースで読みました。申し訳ない話ですが、その記事だけで“色物”と判断していましたけど、この曲は素晴らしく。孤独な気持ちがビンビンと伝わってきました。やはり、触れてみないと分からないことは多いですね。反省です。
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