こたつむり

ヘヴンのこたつむりのレビュー・感想・評価

ヘヴン(2002年製作の映画)
4.0
♪ Will you please tell me the way to the sky
  遠のいて行く とどかない もっと高く

“天国”とはッ!
それは誰もが覚悟できる世界ッ!

…と、どこかの偉い神父さんは言ったそうですが、本作の主人公は確かに覚悟している…そんな気がしました。

それは満ち足りているから。
「あなたさえいれば他に何もいらない」という境地に至ったからこそ、全てを受入れ、運命に身を任すことができたのでしょう。そう、二人でいれば地獄だって天国サ。

だから、彼らは限りなくイリーガル。
絶対に法律が正しいわけがないし、肉親の想いですら、守るべきものにはならないんですね。大切なのは“二人でいること”。真の天国に至ったら容易く毀損することなどないのです。

いやぁ。これはかなりの問題作。
正直なところ、感情移入なんて出来ないし、倫理的に受け入れるのも難しいです。

が、それでも。
ググっと惹きつけられてしまうのも事実。

この辺りは流石のトム・ティクヴァ監督。
監督さんが仕上げた『パフューム』も人を選ぶ作品でしたからね。色々と非凡な才能の持ち主なのに、どこか“狂っている”筆致なんです。というか“狂っている”からこそ、非凡なのかもしれませんが。

あと、根底にジワリと緊張感があるのも見事。
どんなに綺麗な場面(夕暮れ時の丘の上…あれは一生忘れないと思う)でも、弛緩しないのは“静謐ゆえの荘厳さ”があるからなんでしょう。

まあ、そんなわけで。
画作り、テンポ、音楽の使い方…どれもこれもがツボにハマった作品でした。魂の形にピタリとハマったんでしょうね。とても素晴らしい作品でした。
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