ノラネコの呑んで観るシネマ

散り椿のノラネコの呑んで観るシネマのレビュー・感想・評価

散り椿(2018年製作の映画)
4.0
どこまでも真面目に作られた、本格娯楽時代劇。
上役の不正を内部告発して、自分が藩を追われちゃった岡田准一演じる剣の達人が、「自分の代わりに散り椿を見る」という亡き妻との約束を果たすため、八年ぶりに帰ってくる。
しかし彼の存在が、表面上静かだった藩の権力闘争に火をつけてしまう。
散り椿は春椿。
木村大作監督こだわりのビジュアルは、最初極端に彩度を落としていて、冒頭の東宝マークまで色が殆ど見えないのにビックリ。
物語が進み、凍てついた季節から春が近づくにつれて徐々に色づいてゆくのが、故郷の人々に触れる主人公の心象とリンクする仕組み。
プロットは端正でよく出来ているのだが、残念なのがやたらと台詞が説明的なこと。
お家騒動の話で、人物関係が複雑なのは分かるが、もうちょっと画で語る努力をしようよ。
まあ脚本の小泉堯史は「蜩ノ記」も不自然なほど説明的で、全部台詞で語っちゃてたからなあ。
岡田准一と西島秀俊と麻生久美子の三角関係が、「武士道とは生きることと見つけたり」となるのは新しいが、終盤駆け足になるのもちょっと勿体ない。
本作で特筆すべきはやはり殺陣で、どこかのCMじゃないけど岡田准一キレっキレじゃないか。
チャンバラ的な派手さではなく、本当に人を殺せそうな実戦的迫力と凄みを感じさせる殺陣は、そこだけでも十分に見る価値がある。
西島秀俊もカッコいいし、男前を堪能する映画。