ゆず

家に帰ると妻が必ず死んだふりをしています。のゆずのレビュー・感想・評価

3.0
あたり前田のクラッカー。

榮倉奈々の大根でもなければ真に迫ってもいない絶妙にのほほんとした演技が、作品全体に波及している。テレビのスペシャルドラマで充分じゃねえか、金曜夜9時から日テレでいいじゃねえか、などと言ってはいけない。とにかく榮倉になんとなく違和感というか、どこか作り物っぽさを感じずにはいられない。「借りてきた嫁」といった感じだ。だがそんなマイエンジェル榮倉だからこそ癒されるのも事実。ショートカットが好きである。

違和感の正体は、夫婦なのに敬語なところ(年齢差がある)、妻が30歳なのに台詞が古臭い、引用する慣用句などがいちいち昭和っぽいなど。脚本家はどんだけ昔の人なんだと思ってしまったが、実は妻がなんとなく昭和臭いのにはちゃんと理由があった。そしてその理由は、妻が毎日死んだふりをする理由とも繋がっていくのである。昭和臭いのには意味があるのだ。

しかし、その理由が紐解かれたときに見えてくるのは、あくまでもエンジェル榮倉の個人的な動機であって、夫婦間の普遍的な問題の解決とは必ずしもなっていないのが私には意外だった。ヤフー知恵袋の投稿が元ネタであることから、この「妻の死んだふり問題」はあらゆる夫婦に起こりうる問題で、その解答は普遍的な夫婦愛であるはずだと思い込んでしまった。元は知恵袋の匿名の夫婦であったが、この話を元に漫画化され、そして映画化される間に、いつのまにか妻には明確な人格と生い立ちが設定されてしまった。(まあそうでなければ物語化はできないだろう)どの夫婦にも当てはまる話だと思って映画館に行ったら、劇中の夫婦にしか当てはまらないとても稀有なケースだった。元ネタの奥様が死んだふりする理由はついぞ謎のままである…。



7/19 家に帰ると妻が必ず死んだふりをしています。 @MOVIX仙台
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