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ラッカは静かに虐殺されているのmajiziのレビュー・感想・評価

3.5
シリア内戦の混乱に乗じてイスラム過激派組織IS(イスラム国)がシリアの都市ラッカを制圧。

ラッカ在住の若き青年たちが匿名のジャーナリスト集団(RBSS)を結成。

彼らが故郷を取り戻すため、ISに対抗してインターネット上での情報合戦に挑むドキュメンタリー。

トルコやドイツに拠点を移してもISは彼らの潜伏先を突き止め、常に危険とは隣り合わせの状態。
次々に仲間たちや家族が犠牲になる。

ISの支配は街中での公開処刑、情報統制、WEBプロモーションでの若者たちへの洗脳。

公開処刑には少年兵を使い、幼子はISのコスプレでぬいぐるみを斬首し、決め台詞は「アラーは偉大なり」

恐怖と残虐性で人々を支配するISを支援してきたサウジアラビア、カタール、トルコなどのアラブ諸国、シリアの反政府組織を支援する欧米、そしてアサド政権を守るレバノンのヒズボラ、イランやロシア政府。

“敵の敵は味方”が何重にも加わり、過去からの因縁、レバノンへの内政干渉、イスラエルとの対立、トルコとクルド人武装組織などの対立までもがシリア内戦に取り込まれていく。

こんなに複雑怪奇な『内戦』に一体どこの誰が中立、人道、不偏を示せるというのか。

終結が未だに見えないシリアのドキュメンタリー作品は、意図しようとせずともプロパガンダには違いない。

RBSSのメンバーの亡命や生活、情報発信の技術や手段について支援しているのがイギリスやフランス、ドイツ、アメリカ側というのは透けて見えるし、世界の耳目を集めるためにこういう作品が作られて、賞を与えるのは完全な出来レース。

とはいえ、見ていて強調されるISの残忍な処刑場面(モザイクなし)や負の連鎖を断ち切ることが出来ない状況に、心苦しいだけでは済まない、非常に後味の悪さを残す作品でした。
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