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テリー・ギリアムのドン・キホーテの教授のレビュー・感想・評価

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「ロスト・イン・ラ・マンチャ」の頃の構想と同じなのか?それともどこか変わったのか?を知りたい。
ロシュフォールとジョナサン・プライスだとどう違うのか(僕には同じに見えた…)?ジョニー・デップとアダム・ドライバーだと全然違うように思えたし、ジョニー・デップよりもアダム・ドライバーの方が良いように感じた。何よりアダム・ドライバーの「旬」の勢いというのが、追い風になっているのは確かだと思う。

本作は、原題にある「ドン・キホーテを殺した男」と「映画」を通じた現実と虚構を行き来する「物語論」の映画であり、テリー・ギリアムが何故ここまでドン・キホーテに執着し続けてきたか、というのが自ずとわかるつくりになっている。

物語自体は混乱もしていないし、説明過多なわけでもなく、テーマ性を前面に押し出し過ぎているわけでもなく、過去作にあるような「とっつきにくさ」は皆無。
イギリス映画的な、シニカルさや後味の悪さ(褒め言葉)は残しつつ、そして全体的に悪夢的でありながらも、スペインの街並みの明るさと退廃感の混ざった風合いで画面からも楽しさが伝わってくる。

とにかく無邪気さとシニカルさが常にアンバランスな印象があったギリアムが堂々とした風格でド直球の味わい深さを示したことに感動。
映画を通して、映画の罪にも言及しながらも、そして虚構が現実を飲み込み、また現実が虚構を駆逐していく様を描きながらも、最後にまた虚構に飲み込んだ上で「それでいいじゃないか」と高らかに宣言するラストが秀逸。
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