優しいお話だった。
難民問題という重くて苦しい問題がテーマだけれど、それから目を背けてはいないけど、そこが主軸になりすぎるわけではない、カウリスマキらしい、例えるなら温かすぎず冷たすぎない、ちょうど良い温度のお湯の中みたいな、そんな優しさのお話だった。そっと寄り添ってもらえるような。淡々としてるし、相変わらず皆表情はあまりないのだけれど、それでも感じるのは優しさでしかない。
出てくる人達は、皆どこかクスッと笑えるところを持ちつつ、どこかやっぱりダメなところもあって、だからこそ愛おしい。
手紙を受け取って、戻ってきたトラックの運転手さんが、お金の話をされたあとの台詞格好良すぎた。
最初に出てきた奥さんが、最後に「少し寂しかった」って素直に言うの良かった。
レストランの灯りを全部消して、月光だけで照らされた店内とヴィクストロムの姿のシーンの光の使い方で、小津っぽいな、と思った。
シャワールームを教えてくれたり街中で歌ってるおじちゃんの歌が良かった。
ビール飲みに行ったバーや、自分達のレストランでバンドを呼んだときの音楽も良かった。
日本料理のときにレストランで流してる音楽がちゃんと演歌で微笑ましかった。
音楽まで含めてカウリスマキのこういう表現が大好きだなぁと思った。
音楽も人や生活にそっと寄り添ってるようで。
原題が「THE OTHER SIDE OF HOPE」なのを「希望のかなた」とつけたの、とても素敵だとは思うのだけれど、この原題を知ってからラストシーンを思い返すと、カウリスマキにとってのラストシーンはどういう意味だったんだろうな、と思った。救いがあると思いたい。